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マスクどころじゃない!全身おおうファッションがパリコレで話題

 9月28日から10月6日まで開催された、パリファッションウィークの参加ブランドは全87ブランド。  コロナ禍で観客数を少なくしたり、無観客で行ったり、バーチャル空間でショーを行ったりと、各ブランドいつもとは違った形で2021年春夏コレクションを発表しました。  日本からもアンリアレイジが平手友梨奈をモデルに起用し、デジタルショーを発表したことが話題となりましたが、欧米メディアが注目したのは10月4日に亡くなったばかりの大御所デザイナー高田賢三氏のブランド、ケンゾーのコレクションでした。

高級メゾンで唯一アフターコロナを意識

『ファッション・ユナイテッド Fashion United』によると、今回のファッションウィークのトレンドは“ホームメイド感”。伝統的なホームメイドと職人技に立ち戻ることで、サステナブルなファッションスタイルをテーマにするブランドが増えたといいます。  一方で、コロナ禍でフェイスマスクの着用が常識となりつつある世情に反して、ほとんどのブランドがマスクなしの新作コレクションを発表。高級フェイスシールド販売予定のルイ・ヴィトンのモデルも、マスクの生産を発表したばかりのバーバリーのモデルも、マスクなしでランウェイを歩きました。  そんな中、9月30日に屋外の会場で開催されたケンゾーのショーでは、ビーキーパー(養蜂家)を思わせるネット状の長いベールが帽子の上からすっぽりと全身を覆うドレスや、フードの前面にベールのついたロングコートを身にまとったモデルが登場。
 現デザイナーのフェリペ・オリヴェイラ・バティスタ氏が愛する自然との調和をイメージして作り上げたスタイルでしたが、奇しくもコロナ禍におけるフェイスマスクトレンドとマッチ。  数あるハイエンドブランドの中で唯一、世情を反映したコレクションを発表したとして、欧米メディアで注目されました。

インスピレーションはアカデミー賞候補のドキュメンタリー

 米NBC朝の情報番組『トゥデイ Today』によれば、ケンゾーの新コレクションは第92回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞と国際映画賞(外国語映画賞)に同時ノミネートされた、北マケドニアの自然養蜂家を追ったドキュメンタリー『ハニーランド 永遠の谷』(日本公開2020年6月26日)から着想を得たもの。 ハニーランド 永遠の谷『WWD』の取材に対し、オリヴェイラ・バティスタ氏は、新型コロナの影響による自粛生活中に養蜂家の写真を集め、そのインスピレーションをかき立てていたと話しています。 「私たちは壊れやすい環境に生きているのだということを表現したかったのです。(パンデミックによって)誰もが恐怖や不安を抱えている時代に、明るい未来を夢見て、今の私たちに欠けているものに立ち戻りたかった」  養蜂家たちの機能的な作業着は、パンデミックが引き起こした悲しみと不安の中で、彼が探し求めていたソフトなプロテクション(防護)だったといいます。
 蜜を運んで飛び回るミツバチの存在を傷ついた地球の調整役と考え、そのスタイルをレディ・トゥ・ウェアへとバージョンアップさせたのでした。  今回のパリファッションウィークは、オリヴェイラ・バティスタ氏にとってLVMHグループに買収されてから2回目となるショー。彼がどのように高田賢三氏のDNAを継いでいくのか今後が楽しみです。
Sources:「Fashion United」「Today」「WWD」 <文/橘エコ> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
橘エコ
アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。
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