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もう夫のがんは治らない…絶望の底で知った、死に寄り添うということ

「グリーフケア」と出会う

死にゆく人の心に寄りそう 医療と宗教の間のケア (光文社新書)

『死にゆく人の心に寄りそう 医療と宗教の間のケア 』光文社新書

 1つは玉置妙憂さんの『死にゆく人の心に寄り添う 医療と宗教の間のケア』(光文社新書)。玉置さんは看護師であり現在は僧侶でもあるのですが、実際に夫を自宅看護で看取った経験を看護師と僧侶という視点で書かれています。人間が亡くなる前に起こる現象を知ることで、不思議と少しずつ死を自然なものとして受け止める覚悟ができたように思います。
喪失学 「ロス後」をどう生きるか? (光文社新書)

『喪失学 「ロス後」をどう生きるか?』光文社新書

 またもう1つの本は『喪失学「ロス後」をどう生きるか?』(光文社新書)。著者の坂口幸弘さんは死生学や悲嘆学を専門とした関西学院大学の教授で、この本が初めて「グリーフケア」と向き合うきっかけになりました。 「グリーフ」とは喪失の体験による悲嘆やそれに伴う反応のことで、「グリーフケア」とは、グリーフを抱えた人が再び未来を感じられるようになるために寄り添うサポートのこと。当時は自身が負うであろう心のダメージを予習するために、グリーフの状態で起こりうることやケアの仕方をこの本で学びましたが、「グリーフケア」は私の人生に大きな光と希望を与えてくれることになりました。

知識は心を救ってくれる

 もちろん、これらの本を読んだことで夫との死別の恐怖が完全に払しょくされたわけではありません。夫は亡くなる2か月前から入院し、苦しみながらどんどんやせ細る姿を見て、私は人生で最もつらく悲しい気持ちを抱えながら毎日病院に通っていました。  しかし、夫がどんな様子になり、自分の心がどう動く可能性があるのかを本で事前に知っていたので、実際に本に書かれていたことが起こったときは「このことだったのか」と状況を客観視することができました。気持ちが冷静になれて、心に大きなダメージを受けたという感覚は少し抑えられます。知識は、確かに私の心を救ってくれたのです。
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心の底の「覚悟」
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