「私が行ったのは、朝11時くらいかな。到着して彼にメール送ったら『今、奥さんと子どもがサイクロンってジェットコースターに並び始めた』ってきたから『メリーゴーランド(エルドラド)の前で待ってる』って待ち合わせをしました。彼の奥さんと子どもは大好きだったらしいんだけど、彼はジェットコースター系が苦手だから、それを言い訳にして簡単に抜け出せたみたい。
会った瞬間、なんかいつもとは違う妙な高揚(こうよう)がありましたね。同じ敷地内に彼の家族がいて、バレちゃうかもしれないって何てスリリングなデートなんだろうって」

その後も彼は折を見て抜け出してくれたため、菊田さんは一緒にフライングパイレーツやお化け屋敷などを一緒に楽しんだそう。数としてはそんなに多くのアトラクションに乗れなかったけれど、いつもと違うドキドキのデートに大満足で帰ったそうです。
これにすっかり味をしめた菊田さん。今度はちょっと遠出して富士急ハイランドでも……なんて思っていたそうですが、そうは問屋が卸(おろ)しませんでした。
「結局、奥さんに不倫がバレちゃったんですよね~。インターンとはいえ社内不倫だったので、そりゃあもう大ごとになってしまって。
私はバッチリ会社の内定が取り消しになりましたが慰謝料はゼロ。学生だからと請求せずにいてくれた奥さんの寛大な心に感謝しています。もう二度と面白半分に既婚者に手は出しません」
としまえん閉園のニュースを聞いた時、菊田さんはやっぱり真っ先にこの思い出が頭をよぎったそうです。
「彼も同じように思い出してるのかな~とか、なんとなく考えちゃいました。でももし、こりもせず他の女の子と別の遊園地でこういうデートしてたら、私が叱りに行きたいですね。モテる人だったから、可能性はあるんですよ」
とにもかくにも、様々な人たちの思い出が詰まっていたとしまえん。94年間お疲れ様でした!
―不倫デートの悲喜こもごも―
<文/もちづき千代子 イラスト/やましたともこ>
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フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:
@kyan__tama