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『姉ちゃんの恋人』はコロナの描き方が甘い?現実を忘れられる魅力も

非日常が日常化した時代の「恋」

 前述のように桃子は両親を亡くしている。第2話では、それが交通事故によるもので、桃子の目の前で起きてしまったことであると明らかになる。そのトラウマのせいで桃子は車に乗ることができなくなってしまっていて、真人の車に乗り込んだ際に手を震わせる姿が描かれた。  一方の真人もまた複雑な問題を抱えている。第4話では、恋人だった女性が目の前で他人から暴力を振るわれてしまい、反逆した真人もまた暴力を与えてしまうという、衝撃的な過去の傷が明るみになった。 「両親を失った」桃子も、「暴力が介入してきた」真人も、やはり「非日常が日常に侵食してきた世界」にいる住人だ。そんな彼らが手を取り合って生きていくこのドラマは、どう考えても優しさで満ちあふれている。

「幸せになること」をあきらめる必要はあるのか

 桃子は親友のみゆき(奈緒)に対して、真人のことをこう言葉にする。 みゆき「守ってあげたい感じなんだ。捨てられた子犬みたいな?」 桃子「あ~。そうかもしれないけど、すねてる感じではないんだよね。しっかりしてるし、年上だし、大人だし。いじけてたりすねてたり、そういうんじゃない全然。いっつもニコニコしてるし、実は面白いし。……なんか、なにかを諦めてる感じがするんだよね」 みゆき「なんかって?」 桃子「……幸せになることを」  この割れた地球儀のような世界に生きていて、われわれは再び幸せを取り戻せるのだろうか。「恋をすること」や「大事な人と生活を営むこと」といった日常の尊さに改めて気づかせてくれる本作に誘われながら、“姉ちゃん”たちがたどり着く地平に想いを馳せてみたい。 <文/原航平>
原航平
ライター/編集者。1995年生まれ。『リアルサウンド』『クイック・ジャパン』などで、映画やドラマ、YouTubeの記事を執筆。カルチャー記録のブログ「縞馬は青い」を運営。Twitter:@shimauma_aoi
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