「男性は性欲を抑えられない」はウソ。性に依存する人の“頭の中”
セックスや自慰行為などの性行動を強迫的に繰り返してしまい、それが原因で社会的損失や身体的損失、さらに経済的損失を被ってしまう「セックス依存症」の問題。
昨今は芸能人の不倫スキャンダルなどがきっかけとなり、依存症の一種として広く知られるようになりました。
セックス依存症と聞くと、あくまで当事者の抑えられないほどの性欲の強さや性的嗜好の問題として解釈されがちです。しかし、ソーシャルワーカー(精神保健福祉士・社会福祉士)として、長年さまざまな依存症分野の臨床に携わってきた斉藤章佳さんは、新著『セックス依存症』(幻冬舎刊)のなかで、
「セックス依存症の本質は『性欲の問題』ではなく、実際はもっと複雑で、さまざまな複合的要因が絡み合った問題である」
と述べています。今回は、斉藤さんがセックス依存症の背景のひとつとして挙げる「社会構造の問題」に焦点をあて、解説してもらいます(以下、斉藤さんの寄稿)。
不特定多数の女性と性関係を持つ男性の話が出てくると、いまだに「男性の性欲はコントロールできないから……」と擁護するような「性欲原因論」に基づいた話が公然と議題に挙がります。
「男の性欲は抑えられないもの」「コントロール不能な男の性欲が溜まりに溜まって、暴走してしまった」と、あたかも問題行動を正当化するようなロジックが、性犯罪事件から有名人の不倫報道まで多くの場面で登場します。
しかし考えてみてください。本当に男性の性欲がコントロールできなかったら会社で仕事になりませんし、たいていの人は公衆の面前でセックスしません。これまで私は2000人以上の性依存症者の治療に関わってきましたが、性欲が強すぎて抑制できないという人は本当にごく少数でした。