寂しさよりなにより、親が自分にはお金をかけてくれないことが気になったとか。
「両親は姉たちに、お高い通信教育を受けさせたり、有名ブランドのスポーツ用品を惜しみなく買い与えていました。私は得意なものがないからゼロ。
たまたま中学高校と同じったので、制服や革靴のローファー、体操着やカバンなども『おねえちゃんたちのがあるじゃない』と、おさがりばかり。学校では初対面の先生たちから『〇〇の妹か』と言われて頼んでもいないのに比べられました」
末っ子は要領がいい、上の兄弟を反面教師にして育つなど言われますが、なかなかどうして。末っ子ならではのうっぷんも相当たまっているようです。
「出来のいい姉たちへの嫉妬もありました。でも、両親にちやほやされてお金もちゃんとかけてもらえる。何をやっても新品を買ってもらえる。
自分が得意なこともない地味な子だったから余計に『お金をかけてもらえるって、愛されている(大事にされている)ってことなんだ』と思ってしまったんでしょうね。お金=愛情と勝手に自分の中で変換してしまって、そこから徐々に価値観がこじれていったんだと思います」
姉たちが活躍すればするほど、「自分なんて……」と自信がなくなってしまったという三船さん。子どもの頃からこじれてしまった価値観に、今改めて真正面から向き合っているそうです。
「向き合うといっても、そんなにたいしたことではないんですけどね(笑)。昔から好きだったアニメに出てくるキャラクターのセリフだって言われていた言葉で、こんなのがあるんです。
『あなたの場合はお金というより、満たされた気持ちが足りないってことでしょ。スカスカなのよ。あなたの心も頭も』
……この言葉から、うすうす感じていた自分の中の“違和感”に改めて気が付いた感じがして。私は親にもらえなかったもの、してほしかったことをすべて恋人に求めていたんだなって。
自分に自信がないからどんどん卑屈になっていって、その不満を『私にはお金をかけてない、愛されていないってことなんだ』と思い込んいたんです。多分両親も不器用ながらも愛してくれていただろうし、私ももっと自分から自発的に声を上げるべきだった。27歳になってやっと気が付きました。
だから、今までかたよった価値観が原因で別れたりこじれてきた自分の恋愛を、今あらためて見つめなおそうと思います」
そして「いつか自分が親になったとき、物やお金だけじゃなく、しっかり言葉や行動で愛情を伝えていきたい」と語る三船さん。“兄弟が多い家族のあるある”なのかもしれませんが、問題の根本を見つめなおした今、前向きな恋愛に向けて一歩前進したようです。
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わたしの恋とマネー体験談―
<文・イラスト/赤山ひかる>
赤山ひかる
奇想天外な体験談、業界の裏話や、社会問題などを取材する女性ライター。週刊誌やWebサイトに寄稿している。元芸能・張り込み班。これまでの累計取材人数は1万人を超える。無類の猫好き。