
冗談なのに、何本気になってんの?――そんな言葉を言われるのが怖くて、野原さんは初め、彼に強く出ることができませんでした。
「彼のからかいには毒がない。小学生の男子がからかってくるみたいな感じ。なので、私が真面目に怒ったら場の雰囲気が悪くなるのではないかと思い、我慢し続けていました」
しかし、彼のからかいはどんどんエスカレート。なかでも激しく傷ついたのが、誕生日に歳を重ねた際の一言。「ゆきちゃんも、もうおばさんだね」と言われ、さすがに我慢ができなくなった野原さんは彼に「そういうからかい方をされると傷つく」と伝えました。
その言葉を受け、彼は「冗談じゃん。本気にしないでよ」と苦笑い。まずいと思ったのか、その後、からかいの頻度は減っていきました。
ところが、ある日、野原さんはなにげない会話で心をえぐられました。それは、通院中に嫌だった出来事を話したときのこと。
「久しぶりに検査技師さんが男性だったので、裸を見られるのが嫌だったという愚痴をこぼしたんです」
すると、彼は「その男の人、どうせ見るならもっとスタイルのいい人がよかったと思ったんじゃない?」と笑いながら返答。野原さんは無神経なからかいをする彼に対して苛立ちを感じましたが、同時に自分の身体にはやはり価値がないのかもしれないと落ち込みました。
「一番身近な彼から見ても私の身体って、その程度の価値なんだなって。身体だけじゃなくて、自分の価値も分からなくなりました」
その後、野原さんは彼と別れはしたものの、再び不特定多数の男性と関係を持ちつつ、自分の価値を模索する生活……。スタイルの良し悪しや病気の有無に関係なく、人にはオンリーワンの価値があるのだということに1日でも早く彼女が気づき、笑顔になれることを祈りたくなります。
<取材・文/古川諭香>
古川諭香
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:
@yunc24291