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『恋あた』新鮮さのないドラマの中で森七菜が愛される理由

 恋仲になるべく運命づけられたふたりが、すれ違いや四角関係などの紆余曲折を経てついに心を通わせる。『この恋あたためますか』(TBS)がたどるのは、そうした「THE恋愛ドラマ」と呼ぶべき王道のルートである。
(画像:『この恋あたためますか』TBS公式サイトより)

(画像:『この恋あたためますか』TBS公式サイトより)

 具体的には、古くは『東京ラブストーリー』、2010年代でいうと『リッチマン、プアウーマン』(どちらもフジテレビ)など、往年の月9ドラマに見られたラブストーリーの質感を本作にも重ねる人が多いのではないだろうか。 『恋あた』の物語は新鮮さを与える“アップデート”もなにもなく、王道を丁寧になぞることによって生まれるノスタルジーと安心感だけがあるように感じられる。

王道から少しはみ出る「個性」

 22日にいよいよ最終回を迎える『恋あた』。ずいぶん皮肉めいた導入になってしまいましたが、本作は新しくないからといってイコール「面白くない」わけではありません。  変わらない下地があるからこそ、それでも「2020年に制作された」ことで否応なく入り込む「変化」「個性」にも敏感にならざるを得ない。その変化は、「役者(森七菜)」と「自己肯定感の低い登場人物たち」によって構成されていきます。  恋愛ドラマのトーンを決定づけるのはいつだってヒロインのキャラクターであり、それを演じる女優の個性であるに違いない。その点、本作のヒロイン・井上樹木に扮する森七菜の個性とはなんだろう。いろいろ挙げられるだろうが、ここでは「存在の素朴さ」と「とびきりの陽気さ」に注目したい。

なぜ森七菜は愛されるのか

 井上樹木は「選ばれた人物」である。地下アイドル時代にはメンバーのなかでいちばん人気が出ず、なかばリストラのような形で卒業させられてしまった。しかし、彼女には“スイーツ大好き人間”であるという特徴と、一口食べただけで食材や味の違いに気づける天賦の才があった。その能力を“シャチョー”こと浅羽拓実(中村倫也)に認められ、コンビニのいちアルバイトだった彼女は本社でスイーツ開発に携わるようになる。  このわかりやすいシンデレラストーリーぶり。地下アイドル時代にも少なからずファンはついていたのだから、転落とも言えないぬるい挫折の場所からさらに階段を急上昇していくわけである。こういったあまり深みのないキャラクターに果たして感情移入できるのか、と序盤は気になっていたが、それを魅力的に演じてしまうのが森七菜の素晴らしさだ。  森七菜は井上樹木がもつ“特別さ”を彼女自身の素朴さと陽気さで包み込み、愛される人物に仕上げることに成功している。
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自分を愛せない登場人物たち
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