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『姉ちゃんの恋人』有村架純と林遣都だからこそのラブストーリーに

有村架純と林遣都だからこそ成立する芝居

 一度天にも昇る幸福を見せつけたかと思えば、次の場面では地獄に突き落とされている。密室にあなたと私、ぐるぐると上昇したり下降したりする観覧車みたいに人生のバイオリズムを描き出す『姉ちゃんの恋人』というドラマにおいて、とても重要になってくるのが桃子と真人の役柄、すなわち有村架純と林遣都の芝居である。  おたがい過去にトラウマを抱える難しい役柄であるが、ふたりともその役を演じるにふさわしい下地を携えているから説得力があるのだろう。
『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう DVD BOX』ポニーキャニオン

『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう DVD BOX』ポニーキャニオン

 有村架純の、どんな苦しい状況にあっても折れない芯の強さと朗らかな笑みは、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系列)や本作と同じ岡田惠和脚本の『ひよっこ』(NHK)、『そして、生きる』(WOWOW)での役柄をやはり彷彿(ほうふつ)とさせる。  どれも彼女だけはたとえ暗い闇の中でも歩いていけるのだろうと思わせる逞しさがあって、そんな彼女にふさわしい相手が見つかることを我々視聴者は願ってしまう。
林遣都、市原悦子『シャボン玉』ギャガ

『シャボン玉』ギャガ

 一方の林遣都は、具体的な役柄で近しいものとして映画『しゃぼん玉』が思い出される。通り魔や強盗などを繰り返してきた林遣都演じる青年・翔人が、逃亡途中に迷い込んだ宮崎県の山奥である老婆に出会い、彼女と交流するなかで徐々に自分の犯した罪を自覚しはじめるというストーリーの作品。  うまく生きられない弱さと人を愛したい葛藤とに苛(さいな)まれながらもひたむきに生きていく姿を林遣都が快演していて、とても心を震わされる芝居だった。

今年4月に坂元裕二の朗読劇で共演予定だったふたり

 有村架純と林遣都は映画『コーヒーが冷めないうちに』以来の同じ作品への出演となるが、本格共演としては今回が初めて。
 実は今年の4月に、脚本家・坂元裕二が作・演出の朗読劇にこの2人のコンビで出演予定だったが、コロナによって中止になってしまっていたのだった。その原作となった『往復書簡 初恋と不倫』(リトル・モア)も、やはり一筋縄ではいかない、この世界の暗部を照らすようなラブストーリーだ。  役と役がぴったりとはまり、一度はバラバラになったふたりが再び引き合わされて実現した『姉ちゃんの恋人』の共演。まるで本作のストーリーとも共通するようななりゆき。いちドラマファンとしてはまたいつか坂元裕二の作品で共演してくれることを願いつつ、『姉恋』の最終話を心ゆくまで堪能したい。 <文/原航平>
原航平
ライター/編集者。1995年生まれ。『リアルサウンド』『クイック・ジャパン』などで、映画やドラマ、YouTubeの記事を執筆。カルチャー記録のブログ「縞馬は青い」を運営。Twitter:@shimauma_aoi
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