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『俺の家の話』戸田恵梨香演じる後妻業の女「遺産目当てじゃない」が「金はもらう」

「あれ、クドカンのドラマにしてはちょっとスローテンポかな……?」  1月22日に放送された『俺の家の話』(TBS系)の第1話。その冒頭を観た視聴者の中には、そう感じた人も多かったのではないかと思う。なにせ、あの『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』、『ごめんね青春!』など、とにかくスピーディーで情報量と笑いどころの多い、ザ・エンタメ作品の脚本を書いてきた宮藤官九郎のドラマだからだ。
「木更津キャッツアイワールドシリーズ」メディアファクトリー

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 長瀬智也がふんする観山寿一が、プロレスの試合にのぞみながら、そのタイトルの通り「俺の家の話」をしはじめる冒頭。モノローグでゆっくりと語られるのは「父親への愛憎」だった。

長瀬智也演じる主人公を通して「介護」を追体験する

 寿一は能楽の一家に生まれ、父親・観山寿三郎(西田敏行)は人間国宝である。家父長制における「そういうもんだから」=長男だからという理由で後継ぎとして自身も能楽の稽古に励むも、父親はまったく褒めてくれず、まともに会話をすることすらできなかった。  やがて寿一は能と家を捨て、プロレス界の門を開く。「父親が好きだった」プロレスをしたら「やっと褒めてくれるんじゃないか」という希望を持ちながら。そこでは努力は正当に評価され、大勢いる門下生と会長とで形成される共同体には本物の家族以上の「家族」の姿があった。
(画像:『俺の家の話』TBS公式サイトより)

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 家を出て25年の月日が経ち、寿一は42歳。そんなある日、寿三郎の危篤の知らせを受ける。そこから始まる、介護と遺産相続をめぐる観山家の物語。突如寿一の元に舞い込んだ「介護」と「能楽」を、彼の視点を通して視聴者に追体験させる本作は、その重いテーマゆえにゆったりとした運びにならざるを得ない。  だからといってそのゆったりさが、作品の面白みを損なっているなんてことはまったくなく。むしろそうしたテーマをいつものクドカン節炸裂(さくれつ)で徹底的にコメディとして描く本作には、新境地として受容させられてしまう「いいドラマになる予感」がプンプンと漂っていたのは間違いないだろう。

盤石の布陣に漂う“いい予感”

 クドカンのドラマは、いつだってこの“いい予感”に満ちている。  たとえば『タイガー&ドラゴン』では、「落語の天才なのに落語をしない岡田准一」と「ヤクザなのに落語を習おうとする長瀬智也」という別々の境遇を持つ対関係のふたりが同じ舞台に立つ未来を第1話から夢想してしまったし、『監獄のお姫さま』では第1話でシスターフッド感あふれる女性たちの誘拐計画が描かれたのちに、事の発端である6年前にさかのぼっていくという先が気になる手法を用いていた。
「監獄のお姫さま Blu-ray BOX」TCエンタテインメント

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 本作『俺の家の話』においては、第1話からすでに上述の岡田准一と長瀬智也の関係性をトレースしたような、実子と弟子=寿一と寿限無(桐谷健太)の友愛があったり、またこれも『タイガー&ドラゴン』に登場したメグミ(伊東美咲)を彷彿とさせる「みんなを誘惑する人」としてのさくら(戸田恵梨香)の存在があったり。  そもそもその主演俳優=長瀬智也から脚本家=宮藤官九郎、プロデューサー=磯山晶、演出家=金子文紀までもが『IWGP』『タイガー&ドラゴン』『うぬぼれ刑事』と同じ座組みのだから、盤石の“いい予感”がする布陣と言うほかない。  それでも時は過ぎ、求められる物語は変容している。描かれるのは「青春」でも「恋愛」でも「仕事」でもなく、「介護」と「遺産相続」、「家族」の物語である。それはひとえに、製作陣がみな円熟し、また社会が高齢化やコロナ禍のもとで「介護」や「ケア」の物語を必要としているからに違いない。  “いい予感”を携えたまま、現代にふさわしいホームドラマが始まる。
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「遺産目当てじゃない」が「金はもらう」さくらの本音
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