「もともと外資系の会社の子会社で服装や髪型は自由なのですが、アユミさんはひときわ目立つピンクの髪に毎日違うテイストの服を着て、とにかく目立ちました。社内でもすぐに噂になっていましたが本人は気にする様子もなくて。仕事もきちんとしてくれるし、必要以上にこちらにも踏み込んでこないので私はとても助かっていました」
ある日、たまたまアユミさんと帰りがいっしょになったリリカさん。軽く挨拶をすると、突然アユミさんが声を掛けてきたのです。
「アユミさんは、私が持っているバッグが可愛くて気になっていたと言ってくれたんです。声をかけられて驚きましたがそのブランドのものを良いと言ってくる人と始めて出会ったので、嬉しくてついブランドについて熱く語ってしまいました」
楽しそうに語るリリカさんを見て、アユミさんは心底不思議そうに「そんなに詳しいのになぜアパレルの仕事をしてないの?」と聞いてきました。そこでリリカさんはいつものように「
私なんかじゃ無理だから」「私くらいの知識じゃ入れない」と自己否定の言葉を繰り返してしまいます。
「アユミさんはそんな私に、『
自分を認めてあげないなんてかわいそう』って言ったんです。アユミさんは今まで周りから30代なのにと派手な髪を否定され、子どもがいるのにおしゃればかりに気を遣っていると言われ続けていたそうなんです。でも自分らしくいられることが大切で、そんな自分が好きだから自信を持っていられると話してくれました。
それを聞いて、私は母親からの否定だけではなく、自分でも自分を否定することで自信をなくしていたんだと気づいたんです。そして、このままでは良くないという気持ちが生まれてきました」
その日以降2人は頻繁に服やファッションについて話すようになります。そして、アユミさんはリリカさんに対し、アパレルの道へ進んだほうが良いと強く助言を繰り返してくれました。