マスクが原因の、口臭や口のネバつき増加中。“唾液力”を上げる意外な習慣
コロナ下でマスクが手放せない中、人には言えないけれど「あれ、私の口くさい……?」「なんだか口の中がネバっこい」なんて思うこと、ありませんか? じつはこれ、どうやら気のせいではないようなんです! お口の中の“違和感”は、唾液の質と量が低下しているサイン。
ゼネラルリサーチ株式会社が歯科医師1,065人を対象におこなった「マスク時代における唾液力」に関する調査(※1)では、「昨今、口内環境が悪化している患者が増えていると思いますか?」との問いに、8割以上の歯科医師が「増えている」と回答。さらに、「昨今、患者の唾液の量と質は下がっていると思いますか?」という質問には、9割以上が「下がっている」と回答しています。
これってつまり、私たちの口の中で何が起こっているんでしょう……。
そこで、『ずっと健康でいたいなら唾液力をきたえなさい!』の著者でもある、神奈川歯科大学副学長・大学院歯学研究科長/環境病理学教授の槻木恵一(つきのき・けいいち)先生に、唾液力について話を聞きました。
「唾液は全身の健康維持や管理を担っていて、私たちの身体と心は唾液に守られています。唾液の量と質、いわゆる“唾液力”の低下は、さまざまな不調・ひいては命に関わる病気の要因になります」(槻木恵一先生、以下同じ)
命に関わるって……たかが唾液、されど唾液。唾液は健康を維持するために欠かせないモノなんですね。それならなおさら「口クサ」「ネバネバ」を放置するわけにはいきません!
さらにこの「唾液力」は、口呼吸をすることで唾液の質・量ともに大きく低下することも指摘されています。「口呼吸は唾液の量と質の低下に関係していると考えますか?」との質問に、9割以上の歯科医師が「関係している」と回答。
コロナ下のマスク生活も無関係ではないようで、「マスクの着用は口呼吸の原因になると考えますか?」との質問には、9割以上の歯科医師が「なる」と回答しています。
「口呼吸の場合、唾液が蒸発してしまうので口内が乾燥してパサパサになり、さまざまなウイルスに感染する可能性が高くなります。歯並びやかみ合わせ、鼻の疾患などの理由で口呼吸をしている人以外は、鼻呼吸をするように意識してみてください」
筆者もときどき気を抜くと、ポカンと口があいて口呼吸になっていることが……。以後、気を付けます!
唾液の量や質が低下すると、ウイルスに感染する可能性が高くなる他にも、身体はさまざまな健康リスクを負うようです。
「唾液の量と質が下がってしまうことで、どのような健康リスクが考えられますか?(複数回答可)」という質問では、「口臭の悪化」(53.7%)、「虫歯」(50.6%)、「歯周病」(50.1%)といった回答がTOP3に。お口のトラブルのオンパレード! という感じですが、リスクはそれだけではありません。
「唾液に含まれるさまざまな成分は、外部から侵入した異物(ウイルスや病原菌)を排除する他、免疫機能の調整に関わっています。唾液力が低下することで、虫歯や口臭の原因になる他、風邪などの感染症にもかかりやすくなります。
さらに40代以降では、歯周病により動脈硬化、がんや脳卒中、糖尿病などの生活習慣病にも大きな影響を与えるため、注意が必要です」
唾液力の低下が口内環境のみならず、生活習慣病にも関わるなんて驚きです。今までマジメに考えたことがなかった唾液のこと、いよいよ無視できなくなってきました。
マスクの着用や口呼吸で唾液力が低下しやすいことや、そのおそろしさはよくわかりました。でも逆に、唾液力を高める方法はあるのでしょうか?
「唾液の量や質を高める方法は何が良いと考えますか?(複数回答可)」という質問に、ダントツで多かった回答が「こまめな水分補給」(43.0%)。その後は「ヨーグルトなどの発酵食品を食べる」(29.4%)、「唾液腺マッサージ」(27.7%)、「抗酸化作用のある食品を食べる」(24.5%)、「ストレッチ・ウォーキングなど軽めの運動」(23.9%)と続きました。
「自分で唾液力をアップさせるためには、毎日の食事と身体を動かすことが大事です。唾液の量を増やすには、水分をこまめに摂ることが必要で、1日1~1.5リットルのお水やお茶を摂ることが理想です。緑茶の茶葉に含まれるカテキンは唾液中のIgAの量を調整してくれます」
槻木先生によれば、IgAとは身体を細菌やウイルスなどの異物から守る抗体の一種で、唾液に含まれるIgAの量を多くすると免疫力が高まるそうです。
「それから乳酸菌も欠かせません。毎日牛乳を飲むとなると『おなかが弱い』など体質による悩みが出てきますが、ヨーグルトは牛乳より消化がよく飲み込みやすいためおすすめです。毎日100g程度のヨーグルトを継続して食べることでIgAの量を増加させる効果が期待できます」
ヨーグルトって外出先では食べづらいこともあるのですが、ドリンクタイプのヨーグルトでも効果は同じなのでしょうか。それから、摂るのに適した時間帯はありますか?
「ヨーグルトは飲むヨーグルトでも食べるヨーグルトでも同じ効果が得られますので、好きな方を選んで大丈夫です。摂る時間も、好きなタイミングで問題ありません」
よかった! ドリンクタイプのヨーグルトなら、コンビニでもすぐ買えてお手軽です。
「他にも、唾液量を増やすために効果的なのが青魚やオリーブオイル、ネギ類、トマト、納豆などの抗酸化食材・発酵食品になります。揚げ物やインスタント食品など脂質が多いものは、食べすぎると唾液の質が下がり免疫力が低下につながります。無理のない範囲で食生活の改善をし続けてみてくださいね」
リモートワーク中、手軽に食事を済ませようとジャンクフードを食べまくっていました……。気を抜くと脂っこい食事が多くなりがちなので、注意したいところです。
「スルメイカやたくあん、ガムなど、かためのものをよく噛んで食べることも唾液量のアップに効果的なので、試してみるといいですよ」
食生活の改善となると大変ですが、まずはコンビニで買える飲み物や食材だけでも十分。ヨーグルトや納豆を冷蔵庫に常備しておく、水やガムを手元に置いておいて気づいたら口にするなど、できる範囲で唾液力を高めて、免疫力を上げていきたいですね。
※1
調査概要:「マスク時代における唾液力」に関する調査
調査期間:2020年12月25日~2020年12月26日
調査方法:インターネット調査
調査人数:1,065人
調査対象:歯科医師
調査主体:ゼネラルリサーチ
【槻木恵一(つきのき・けいいち)】
神奈川歯科大学副学長・大学院歯学研究科長/環境病理学教授。神奈川歯科大学歯学部口腔病理学教室、助手、特任講師、 助教授を経て2007年より教授。2013年より同大学歯学研究科長。2014年より同大学副学長。歯学博士。専門分野は口腔病理診断学・唾液腺健康医学・環境病理学。
<文/瀧戸詠未>
コロナ下で「唾液力」が下がりまくっている!?
これってつまり、私たちの口の中で何が起こっているんでしょう……。
そこで、『ずっと健康でいたいなら唾液力をきたえなさい!』の著者でもある、神奈川歯科大学副学長・大学院歯学研究科長/環境病理学教授の槻木恵一(つきのき・けいいち)先生に、唾液力について話を聞きました。
「唾液は全身の健康維持や管理を担っていて、私たちの身体と心は唾液に守られています。唾液の量と質、いわゆる“唾液力”の低下は、さまざまな不調・ひいては命に関わる病気の要因になります」(槻木恵一先生、以下同じ)
命に関わるって……たかが唾液、されど唾液。唾液は健康を維持するために欠かせないモノなんですね。それならなおさら「口クサ」「ネバネバ」を放置するわけにはいきません!
唾液力の低下に“口呼吸”が関係。マスクも一因
「口呼吸の場合、唾液が蒸発してしまうので口内が乾燥してパサパサになり、さまざまなウイルスに感染する可能性が高くなります。歯並びやかみ合わせ、鼻の疾患などの理由で口呼吸をしている人以外は、鼻呼吸をするように意識してみてください」
筆者もときどき気を抜くと、ポカンと口があいて口呼吸になっていることが……。以後、気を付けます!
唾液力が下がると、こんな病気のリスクが上がる
「唾液に含まれるさまざまな成分は、外部から侵入した異物(ウイルスや病原菌)を排除する他、免疫機能の調整に関わっています。唾液力が低下することで、虫歯や口臭の原因になる他、風邪などの感染症にもかかりやすくなります。
さらに40代以降では、歯周病により動脈硬化、がんや脳卒中、糖尿病などの生活習慣病にも大きな影響を与えるため、注意が必要です」
唾液力の低下が口内環境のみならず、生活習慣病にも関わるなんて驚きです。今までマジメに考えたことがなかった唾液のこと、いよいよ無視できなくなってきました。
唾液力を「高める」飲み物や食べ物がある
「唾液の量や質を高める方法は何が良いと考えますか?(複数回答可)」という質問に、ダントツで多かった回答が「こまめな水分補給」(43.0%)。その後は「ヨーグルトなどの発酵食品を食べる」(29.4%)、「唾液腺マッサージ」(27.7%)、「抗酸化作用のある食品を食べる」(24.5%)、「ストレッチ・ウォーキングなど軽めの運動」(23.9%)と続きました。
「自分で唾液力をアップさせるためには、毎日の食事と身体を動かすことが大事です。唾液の量を増やすには、水分をこまめに摂ることが必要で、1日1~1.5リットルのお水やお茶を摂ることが理想です。緑茶の茶葉に含まれるカテキンは唾液中のIgAの量を調整してくれます」
槻木先生によれば、IgAとは身体を細菌やウイルスなどの異物から守る抗体の一種で、唾液に含まれるIgAの量を多くすると免疫力が高まるそうです。
1日100gのヨーグルトを! 飲むヨーグルトでも効果は同じ
抗酸化食材や発酵食品を無理なく取り入れて
瀧戸詠未
大手教育系会社、出版社勤務を経てフリーランスライターに。教育系・エンタメ系の記事を中心に取材記事を執筆。X:@YlujuzJvzsLUwkB






