紙切れ一枚で、親と縁を切れるか? 絶縁状はあまり意味がない
「親を捨てた」人たちが増えている――。多くの人にとっては“信じがたい”現象が、超高齢化社会の日本で現実に起きているという。
毒親と縁を切りたい、親からお金を要求されて共倒れになりそう…など、やむにやまれない事情もあるだろう。そうなった場合、法的に縁を切る方法はあるのだろうか?
いっそのこと、もう縁を切ってしまいたい――。そう思って親に絶縁状を叩きつける!という映画・ドラマを目にするが、家族問題に詳しい行政書士の三木ひとみ氏は「(絶縁状には)さほど、意味はありません」と話す。
「絶縁状は理由や発言をただ記録したもので、内容証明に近いもの。親子関係を絶ち切る強制力は一切ありません。なので、例えば親が生活に困窮したときには、『生活扶助義務』で行政から連絡が来てしまいます」
では、書面一枚で、憎んでいる親からの連絡を拒む方法はないのだろうか?
「私がオススメしているのは、住民票などに閲覧制限をかけられる『支援措置申出書』です。親子関係でも精神的な暴力や、カネの無心など金銭的暴力でも適用されることが多く、引っ越し後にはぜひ申請してください。
徹底的にやるならば、中立的な調停委員を間に入れた『親族関係調整調停』をすることもできます。一切顔を合わさずに、『今後つきまといはしない』など調停調書を作れば、法的に強い効力があります」
ほかにもDVや虐待などを受けていた場合、裁判所から「接近禁止命令」を出してもらうことも可能だが、ハードルはかなり高い。
「あとは我々のような行政書士や司法書士が“成年後見人”として間に入りサポートする手段もあります。私のお客さまのなかで、最初は絶縁するつもりだったのに、私たちのような“第三者”が入ることで親子ともに冷静になり、関係が修復したなんてケースも実際多いんですよ。
警察沙汰、裁判沙汰は生涯の別れになると思いますので、その前に一度、第三者に相談するほうがいいと思います」
絶縁するにはなかなか強い気持ちが必要だが、いざというときの手段を知っていれば、親とも冷静に話せるかもしれない。
【行政書士・三木ひとみ氏】
行政書士法人「ひとみ綜合法務事務所」所属。生活保護業務が専門。自らも親子問題に悩む当事者として発信する
<取材・文/週刊SPA!編集部>