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歌手・愛内里菜が再始動。懐かしのブッ飛んだ歌詞よ、もう一度

 2000年代前半に「恋はスリル、ショック、サスペンス」(アニメ『名探偵コナン』オープニングテーマ)や「FULL JUMP」などのスマッシュヒットを連発した「愛内里菜」こと、タレントの「垣内りか」または「R(アール)」。3月23日から、再び芸名を愛内里菜に戻して活動を再開すると発表しました。
愛内里菜 再始動リリースより

愛内里菜 再始動リリースより

 これに先立って、かつての所属事務所のプロデューサーからセクハラを受けたとして、1000万円の損害賠償を求める裁判も起こしており、いま何かと話題になっています。  アラフォー世代には懐かしすぎる存在の愛内さん。そこで改めて当時の楽曲を振り返ってみると、愛内さんの書く歌詞がかなりぶっ飛んでいるのです。  分かりやすさや、心温まるメッセージがウケる今日このごろ。愛内さんの復帰は、そんな風潮に一石を投じることができるのでしょうか?  CDバブル末期に咲いた徒花。“迷”作詞家、愛内里菜の傑作を見ていきましょう。

①「Over Shine」2003年、オリコン最高6位

 愛内さんを語る上で外せない一曲です。歌い出しから難解を極めます。   <人との違いと 人と一体感を 人として同時に僕ら  求め生きようと 持ち合わせようと 達成しようとしては 生きてくほど  守りたいものさえ定められず>  冒頭の“人”三連発は、「人民の人民による人民のための」(リンカーン大統領)へのオマージュでしょうか。とにかく、<違い>と<一体感>、どちらも大事だと訴えていることだけはわかります。多様性を尊重する令和にも通じるメッセージですね。  しかし、愛内さんはすぐに挫折してしまいます。今度は怒涛の動詞四連発で、苦しい状況を表現する。<求め生きようと>、<持ち合わせようと>、<達成しようと>、<生きてくほど>。最初と最後が重複している気もしますが、結果<守りたいものさえ定められず>と、人生のモチーフを見失ってしまう。これを元気よく歌い上げるのです。  最初の決意から諦めるまでの時間、わずか20秒余り。句読点の入り込む余地すら与えないちゃぶ台返し。個人的には、この一行をベスト歌詞オブJポップに挙げたいぐらいです。雰囲気と勢いだけでも何とかなるものだと勇気づけられました。   

②「Deep Freeze」2002年、オリコン最高5位

 ひとつのことを言い終わる前に、別のことが気になってしまう。それ自体はよくあることですが、そのような気の散り具合がすべて言葉になっているのが愛内さんの特徴かもしれません。そして、それがある種目くらましのような、独特な文体を醸成している。「Deep Freeze」という言葉の意味を説明する部分に、如実にあらわれています。 <ありのままじゃ もう美しいものじゃなく 毎日はもうすでに汚れてて 冬空の下 しがみつけず 確かめられず そんな深く凍りつくものを抱えて それでも君が私を見つけて 「美しい」とね呼べるものを与えてくれたから>  これだけの文字数を費やしながら、理解できるのは「Deep Freeze」の直訳らしき<深く凍りつくもの>という部分のみ。ひとつひとつを分解すれば、日本語に属する単語なのに、愛内さんの手にかかると、とたんに意味を失ってしまう。数字のゼロみたいな存在なのかもしれません。
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2020年のアルバムは…違う!?
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