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30すぎて発達障害とわかった私が、治療で“ましになった”話/漫画家・カレー沢薫

なぜ中年まで検査を受けなかったのか

 集中力がなく飽きっぽく、急に変なことを口走ることもあり、一貫して友達が少なく、友達がいなさすぎて、教師が突然家庭訪問にきたこともあった。  社会人になってからもそれが顕著(けんちょ)で、隙あらば仕事以外のことをしようとしたり、間違いも多く、もちろん職場で人間関係を築けず、ミスをしたら誰にも相談できず隠したりと、とにかく周囲に迷惑をかけまくった。  早くから違和感を感じていたのに、なぜ中年になるまで検査を受けなかったかというと、まず「中年だから」である。  他の地域はわからないが、私が子どものころは「発達障害」という言葉自体が存在しなかったのだ。  ない物の名前はつけられない。 「鼻血」という言葉がなければ「鼻から血が出ている人」と呼ぶしかないように「発達障害」という言葉がなければ「落ち着きのない変なガキ」としか言いようがないのである。  よって、自他とも「何か変」とは気づいていても「それ発達障害じゃね? 検査してみれば?」という話にはならなかったのだ、そもそも検査する場所があったのかも疑問である。

今度は「社会人」という壁があった

 しかし社会人になるころには、我が村にも「発達障害」という言葉が伝来し、もしかしてそうなのでは? と思うようにはなった。  だが今度は「社会人」という壁があった。  病院というのは基本的に平日昼間やっているもので、会社員が休みの日には閉まっている場合が多い。  たとえ病気でも「こりゃ内臓が破裂してんな?」という確信がない限りはなかなか平日休んで病院に行ったりしないものである。  目に見えて心身に不具合が見られるわけではない発達障害ならなおさらだ。  よって、何故その年で発達障害の検査を受ける気になったのか、と聞かれたら「会社をほぼクビになって平日動けるようになったから」と言うしかない。  しかし多くの人が「できればクビになる前になんとかしたい」と思っているだろう。
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治らないなら開き直る
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