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メイプル安藤なつ「介護“される側”の気持ちを考えた」20年の介護経験

 誰かに聞いてみたいけれど、どことなく人には聞きにくい“よそんちの介護事情”。20年以上の介護経験をもつ、お笑いコンビ・メイプル超合金の安藤なつさんに、昨今の介護事情をはじめ、介護にまつわるちょっと使えるテクニックや、赤裸々な体験談を尋ねてみました。
メイプル超合金の安藤なつさん

メイプル超合金の安藤なつさん

 聞き手は、ライターや漫画家として活動し、夫婦そろって認知症だったじーちゃんばーちゃんの介護を25歳からおよそ7年間担当した青山ゆずこです。  前回紹介したのは、介護で食事を拒否されたときに「情報屋ごっこやグルメリポーターの彦摩呂さんのマネで懐に入り込んで食べてもらう」という技。さて今回は、どんなテクニックが飛び出すのでしょうか。

トイレの介助は、される側にこそ“緊張感”がある

安藤なつさん(以下、安藤): 情報屋と彦摩呂さんって、もうどんな話だよって感じですよね。それだけ聞いたら。混乱するわ。 青山ゆずこ(以下、ゆずこ): 確かにそうですね(笑) 安藤: ところでゆずこさん、“介護をされる緊張感”って考えたことあります? ゆずこ: (ケア)される側の緊張ですか? 介護する側のこちらが何をしたらいいのかは考えますけど、そちら側はあまり考えたことはないかも。 安藤: あのね、介護される側のみなさんも、されることに緊張したりすると思うんですよ。その最たるものがトイレの介助。もうトイレは最後のプライドとも言える。そういう意味では家族に介助されるとすごく緊張するというか、ささいな言葉や行動に傷ついちゃう人も少なくないんです。むしろ、近い人にお世話をされるより、知らないけどちょっと信頼できる人(専門のプロ)に任せちゃう方が、本人にとってもすごく楽だったりする。 安藤なつ×青山ゆずこゆずこ: 私もばーちゃんがトイレに間に合わなかったとき、「漏らしちゃったね」っていう言葉は絶対に言わなかったな。絶対恥ずかしいし、もし自分がそんなこと言われたらプライドがズタズタに傷つきますもん。それでもうトイレに行きたいって言い出せなくなって、我慢して我慢して、また失敗してまた傷ついて……って。こうやって悪循環になっていくんですね。

プライドを傷つけないことがめちゃくちゃ大事

安藤: そう。どれだけ失敗しても、責めるような言葉は絶対言っちゃだめ。失敗を繰り返してもトイレは最後のプライドというか砦(とりで)だから、どうしても「一人でいける!」って言い張る人も少なくないんですよ。だから私はそんなときは、「お願いしまーす(一人でやってみてね)」って頼っちゃうんです。 「なんかあったら呼んでね~」って言って、失敗したとしても一切触れないでササっと拭いちゃえばいい。漏らしちゃだめ! なんてルールもないし、それよりもプライドを傷つけない方がめちゃくちゃ大事ですよ。私も「やべえ! 花瓶の水こぼしちった!」とか言って、サーっと片付けてました。 ゆずこ: うんうん、そうですよね。漏らさせちゃダメっていうルールってないんですよ。掃除するのは大変だけど、相手のプライドを傷つけてまで「トイレで失敗しないためには」とか、やったことを責めるのって本当に必要なの? って思うんですよ。  責めて責められて空気が重苦しくなるくらいなら、サクッと気分を切り替えちゃう。適当に世間話をしながら着替えてもらって、さっと拭いて。そんでせんべえでも食べながら、ゲラゲラ笑ってお茶飲んでた方がよっぽど楽しいじゃん、って。 安藤: ゆずこさんのそのスタンスいいッスよね。相手を緊張させない、そのちょうどよくチャラい感じ。 ゆずこ: 安藤さんに褒められた! イェーイ! バイブスいと上りけ…… 安藤: おい、やめとけ。
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介護での“子ども扱い”が気になる
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