「落ち着かない状況で呼んだのは誰なの!?」
いきなり怒り出した裕美さんに、隆さんは慌ててしまいました。
「ど、どうしたんだよ」
「どうしたじゃないでしょ? いきなり友達連れてきて、何考えてんの?」
「いきなりじゃないだろ、ちゃんと電話で確認したじゃないか」
「連れてくるの前提だったじゃない。あの状況で断れるわけないでしょう」
「
別にお前が気にしてるほど散らかってないって」
「あなたは良くても、私は嫌なんだってば!!」
こうして夫婦喧嘩に発展し、隆さんはその後1週間、口をきいてもらえなかったのでした。
女性はよく見られたい、きれいに見られたいという欲が男性よりも強くあり、それが叶わないときにはストレスを感じます。
「そんなに気にしなくても良いじゃないか」と考えるのは男性の視点です。家庭を切り盛りしてくれる妻に敬意を持つべきですし、だからこそ人を招く場合には気を使わなくてはいけません。
では、どれくらい前に言っておけば良いのか、それは人によってそれぞれ基準が違いますから、事前にルール化しておけば、このような諍(いさか)いを回避できます。細かいことのようですが、子どもが生まれる前にぜひ話し合っておいてほしいテーマです。
夫婦の関係を改善するのに遅いということはありません。男性からの働きかけによって、良好な間柄に戻れる方法は必ずあります。一組でも多くの夫婦が仲良く愛し合いながら、長い道のりをともに歩き続けてくださることを願っています。
<文/東野純彦>
東野純彦
東野産婦人科院長。妊娠・出産・育児にかかわらず、思春期から熟年期、老年期まで女性の生涯にわたるトータルケアを目指す。育児における父親の役割を学ぶための「父親教室」なども開催。