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五輪チケット当選者の不安。「夫婦で50万円分買った」主婦の胸中は

  いよいよ開催まで1か月をきった東京オリンピック。中止すべきだという声も多い中、大会組織委員会などは、観客を会場の収容定員の50%以内=最大1万人を原則として、開催を決めました。8月に開幕する東京パラリンピックについては、7月16日までに観客の扱いを改めて決定するようです。
オリンピック当選者の末路

写真はイメージです(以下同じ)

 6月23日には、販売済み観戦チケットの再抽選や払い戻しの方法も発表されました。抽選とはいえ無観客試合を免れたことで、観戦チケットを持っている人はホッとしている…と思いきや、実際はそうではないようです。複雑な心境を語ってもらいました。

日雇いバイトまでしてチケット代を工面したのに

「オリンピックの観戦チケットが当選したときは天にも昇るほど嬉しかったです。知人はみんな落選していましたから……まさにプラチナチケットだったんです」  そう語るのは夫のアカウント分も含め五輪チケットを7セッション(試合)・合計18枚当選した専業主婦・宮田菜穂さん(仮名)。宮田さんは大のスポーツファンで、中でも野球は贔屓(ひいき)チームの試合を年間20試合以上観戦に行くほどです。当然、宮田さんは横浜スタジアムで行われる野球のチケットを中心に申し込み、争奪戦に勝利しました。 「当選確率が高くなるよう、払える範囲の上等の席種をカスケード方式(※)で申し込んだのが勝因だと思います。たくさん当たって喜んだのですが、夫婦合計で50万円近い金額になってしまったのは誤算でした(笑)」 ※希望のチケットが落選した場合に、同じ試合で1つ下の席種についても抽選対象とするサービス。 オリンピック当選者の末路 宮田さんは当選した時のことを思い出し、苦笑します。ポイント還元率が高く入会特典が多くつくカードをあわてて申し込み、支払い処理をしたそう。夫は一時的に工面してくれたものの、オリンピック熱の高い宮田さんに押し切られる形でアカウントを作り、チケット抽選に申し込んだ形。そのため、夫の意思で申し込んだセッション以外は自分で支払うように言われたとか。 「夫の言い分はもっともなので、自分の貯金とアルバイトで捻出しました。子供は夫や義実家に休日世話をしてもらい、港湾の倉庫で日雇い労働をしたり、試験監督のアルバイトをしてやっと稼ぎました。産後の身体で大変でしたが、オリンピックを見るのが昔からの夢だったので……」  ところが、そんな宮田さんの夢は新型コロナの影響で先行きが見えなくなってきたのです。

延期した1年で子供は“イヤイヤ期”へ。子連れ観戦は絶望的……

 2020年に世界規模で感染拡大した新型コロナウイルスによって、ご存じの通り東京オリンピックは翌年(2021年)まで延期されました。落ち込んでいた宮田さんに、「楽しみが先に延びただけ」と励ましてくれる人は多かったといいますが、1年延期によって問題も出てきました。  それは、子供の成長による不安だとのこと。 オリンピック「チケットは2歳未満であれば抱っこで入場でき、その場合は子供のチケットは免除されるんです。オリンピックが予定通りに行われていれば我が子は1歳。抱っこでも十分に観戦できる頃だろうと2枚しか申し込まなかった試合もあります。1歳なら夜は寝ているだろうし、と……」  延期されたことにより、チケット免除は3歳未満に引き上げられましたが、なんとお子さんのイヤイヤ期が始まってしまったのです。その時期の子供はスタンドで2時間じっと観戦をすることは不可能に近いでしょう。体重も増えたため抱っこ観戦も大変だ、と悩みは尽きません。  また、もう一つの問題も出てきてしまいました。 「3月に第2子が誕生しました。元々は妊娠中の観戦になる予定でしたが、もうひとり増えてしまって……。3枚分チケットを買った試合も、乳児を連れて行くことは体力的に難しいです。だれか預ける人を探さなくてはなりません」
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対戦国は未発表。譲渡もためらう複雑な心境
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