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五輪チケット当選者の不安。「夫婦で50万円分買った」主婦の胸中は

対戦国は未発表。譲渡もためらう複雑な心境

 そして、当然のことながら、オリンピック会場での感染も不安だと宮田さんは言います。 「ならば今の時点で払い戻しを希望すればいいのでは?」と筆者が宮田さんに疑問をぶつけたところ、熱い語気でこう返ってきました。 オリンピック「私はスポーツが大好きで、東京での開催が決定した時からオリンピックを楽しみにしていました。今までの人生でスポーツに感動して、救われたことはたくさんあります。だからこそ、開かれるのであれば絶対に生で観たいんです。そして、オリンピックを観戦するという一生に一度あるかどうかわからない貴重な経験を、子供たちにも味わってもらいたいんです」  それに加え、譲渡を約束してしまった友人もおり、その人たちのためにも払い戻しはしないといいます。対戦国の組み合わせを見てリセール(※公式サイト内での定額譲渡)をかけようと考えていた試合もありましたが、今はそれさえも決まってない状態。払い戻すことに大きなためらいがあるようです。 「日本戦ならやっぱり見に行きたいですからね……」そう言いながらも、肩を落とし宮田さんは続けます。

医療従事者に申し訳ない。当選者の複雑な本音

「でも、今はこんな状態で思い切って応援できないですよね。隣の人と肩を組んで観戦の喜びを分かち合うのもスポーツ観戦の醍醐味なのに。観に行くことで、人の目も気になります。  そしてこんな中でもコロナと向き合っている医療従事者の方々に申し訳ないと言う気持ちもあるんです。不安もある上に思い切って楽しめないなら、いっそ中止にしてくれた方がどんなに楽になるか……」 オリンピック 最後に出てきた言葉に、宮田さんの複雑な本音が見えたような気がします。そして取材の終わりに、彼女は笑顔でこうつぶやきました。 「オリンピックのことを考えて気分が重くなった時は、中止で払い戻されたチケット代を元手にハワイ旅行に行こうと考えて気を紛らわせています。もちろん、コロナが収束したら、ですが。もしかしたら、子供たちはオリンピックよりもそっちが楽しいかもしれませんね」 =======  国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、東京五輪・パラリンピックに向けた21日の5者協議で「『Here We Go(さあ、行くぞ)』と言いたい。われわれは、もう『Ready(準備万端)』だ」と話し、あとは開幕を待つばかりという姿勢を強調しました。  宮田さんのような当選者たちを安心させるためにも、組織委員会は観客たちに向けたビジョンをさらに明確に示して欲しいものです。 <文/小政りょう>
小政りょう
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦
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