本作をリアタイしたときの筆者も当然魔法にかかったひとり。安達のピュアなリアクションの数々にはいつもキュンキュンさせられたし、黒沢を演じる町田の包容力あるキャラの一途な気持ちを応援したくもなった。
何より感動的だったのは、黒沢の気持ちに戸惑いながらも、彼の本気に何とか応えようとする誠実さが赤楚の全身から滲み出ていたことだ。
安達が黒沢の気持ちに気づき、二人の関係性が徐々に近づき始めた第3話でのこと。飲み会で盛り上がる王様ゲームで当たりを引いた安達と黒沢がキスをすることになり、唇ではなくおでこでとどめたものの、安達を怖がらせてしまったと謝る黒沢に対して、「嫌じゃなかった」と言う場面。
『SUPER RICH』のラーメン屋台と同じように、ここでも相手の立場を気遣いながら自分の気持ちを伝えるために、選び出した言葉が胸に刺さる。その言葉に黒沢がどれだけ救われたことか。
こんなに優しげな雰囲気をまとわせて演技をする俳優を他に知らない。赤楚の魅力、それはやっぱり相手をほっこり安心させる優しさだと思う。
さて、話を『SUPER RICH』に戻すと、本作は赤楚&町田の『チェリまほ』コンビ約1年ぶりの再共演作として話題を集めている。第1話では二人のやり取りはなかったが、両者ともどん底の衛にしっかり寄り添うような役どころ。
衛がつい心を開いてしまう優が子犬系なら、秘書として衛を支える町田扮する宮村空は忠犬といったところだろうか。『チェリまほ』とは違いおそらく今後はライバル関係になっていくことが予想される。
しかしライバルでもきっと二人は手を取り合うはず……と、想像してしまうのは、『チェリまほ』ロスとその魔法が解けていないためだろうか。いずれにせよ、赤楚がこれまで一貫して持ち続けてきたほっこり優しげなキャラが、この先もドラマを展開させていくことに期待したい。
<文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:
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