容姿にコンプレックスを持つ人は、幼い頃に男性に「ブス」と言われていじめを受けた経験がある人もいますが、millnaさんは特にそのような経験はなかったといいます。中高大と女子校で男性とかかわることは少なかったものの、インターネットの掲示板の男性の書き込みの影響が大きかったようです。
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持っている仮面は〈ドール面制作サークル「ぬこパン」〉とのコラボレーション作品。
「私が高校生の頃、2ちゃんねる(現在は5ちゃんねる)で女性が異常に軽視される書き込みが多くて、世の中の男性は女性のことをこんな目で見ているのかとショックを受けて……。今の5ちゃんねるはわかりませんが、当時の2ちゃんねるでは女性=知性のないバカといった扱いで、自分の身体に自信がなくなりました。
非常に多感な時期にインターネットしか居場所がなかったので、男の人ってみんなそうなのかと。今は良い男友達にも恵まれ考えは改めています」

初めて作った仮面。2015年の作品。
ネットの書き込みがきっかけで自分の顔にコンプレックスを持ったmillnaさん。そして、14歳くらいから人形を作り始めます。やがて仮面制作も始めますが、当時は仮面というと一種のフェティッシュだったので普通の店には売っておらず、アダルトショップで買ってきた動物の仮面にメイクを施して作ったこともあったそうです。しかし現在被っている仮面は3Dプリンタを用いて作っているとのことです。
また、仮面を被ることは何かの変身願望、例えばコスプレをすることはそのキャラになり切る願望があることが多いですが、millnaさんが仮面を被るのはそうではなくて回復願望だと語ります。

(写真提供/millnaさん)
「私は私になりたかったんです。
美しい誰かになりたいわけではなくて、あるはずだった自分になりたかった。例えば、コスプレは自分じゃない憧れのキャラになりたいという願望でされている方も多いと思います。ファッションとコスプレは明確に区別されていて、
コスプレが理想の他者になりたいという変身願望なら、ファッションは理想の自分になりたいという回復願望だ、と考えていて。
そしてデコるという言葉を私があえて使っているのは、仮面を作って身につけて新しい顔になっちゃおうとか、服ごと新しい身体ってことにしちゃおうという取り組みを、メイクやファッションと同じ感覚で語るため。好きなメイクをして、好きな服を着て、選べなかった身体をデコって自分にしていこう。できるし、していいんだよって、そう伝えたいです」