何者?人形をかぶって素顔を隠す女性millnaさん「整形では人形の顔になれない」
仮面を被った瞬間、別人のような仕草に
理想の自分になるために今ある自分の身体をデコる。また、特徴的だったのは、millnaさんが仮面を被った瞬間、まるで別人のようなしなやかな仕草になったことです。そして「はぁ~! 楽だ!」とこぼしたこと。millnaさんがファッションとして理想の自分になれた瞬間を目の当たりにしました。
また、「楽だ」と言った言葉には「呼吸が楽だ」という意味も含まれていました。今まで仕上げてきた仮面は視野がとても狭く、小さな穴からしか見えず、呼吸もほとんどできなかったそうです。特にドールモデルの「橋本ルル(※)」の仮面や、「DOLL GAL millna」という名前で活動をしていた仮面は普通の人だったら30分で呼吸が苦しくなるところを、millnaさんは日々の訓練により3時間以上つけていられたそうです。
しかし、最新の仮面は鼻と口をなくしてしまって目だけのパーツがついている仮面なので、今までの仮面より空間ができたことで断然呼吸が楽になったということでした。
(※橋本ルルは〈ドール面制作サークル「ぬこパン」〉とのコラボレーションで生まれた作品です)
性的な目線にすごく嫌悪感がある
「めちゃくちゃな話に感じるかもしれませんが、私は本来人形だったはずなんです。でも、なぜか人間の身体に生まれてしまった。そのくらいに考えています。非常にセンシティブな話ではあるのですが、性的な目線にすごく嫌悪感があって。女性であることは苦しいですが、別に男性になりたいわけではありません。人形って人間の性的な身体に対して真逆だと思っています。
じゃああなたはセクシャリティに関してアセクシャル(他者に対して恋愛欲求や性的欲求を抱かないセクシャリティのこと)なんですか?と聞かれることもあるのですが、それともまた違って。自分の自然な状態に、あまり名前をつけたくないのかもしれません。性はグラデーションだと思っています。私はただ、私にとって、性的ではない状態になりたいんです。それが私にとっては人形です」
仮面を被ることは変身願望ではなく回復願望でありファッション。millnaさんの場合は仮面を被るという奇抜な行為ですが、ネイルサロンに通って綺麗なネイルを施すことやお気に入りの服を着ることも身近な回復行為なのではないかと思えた取材でした。自分の容姿に自信がない方は、変身願望ではなく、回復願望という考えを取り入れてみるのも生きやすくなる手なのではないでしょうか。
<取材・文/姫野桂 写真/我妻慶一>
- 「カワイイカルト高円寺店」店内の様子
- millnaさんが作った服やアクセサリーを販売
- レースを参考に仮面の模様をデザイン(写真提供/millnaさん、以下同じ)
- 最新の仮面は3Dプリンタで制作
- アトリエの様子
- アトリエの様子
- 初めて作った仮面。2015年の作品。
- ジャージー素材のセットアップ(millnaさん作)
姫野桂
フリーライター。1987年生まれ。著書に『発達障害グレーゾーン』、『私たちは生きづらさを抱えている』、『「生きづらさ」解消ライフハック』がある。Twitter:@himeno_kei


















