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大泉洋×柳楽優弥の師弟愛にキュン。『浅草キッド』にシビれた

劇団ひとりが笑って泣ける見事なエンターテインメントに仕立てた

なぜたけしが華麗にタップダンスを踏めるのかとか、たけし特有の言い回し「バカヤロー!」がどうやって生まれたかとか、レジェンドのはじまりの物語はなかなかすてきなお話なのである。とりわけ、タケシがタップダンスをずっと練習し続けて身につけていくなかで、ここぞというときにタップダンスのリズムが助けになるエピソードにはグッとくる。 そう、この作品、グッと来るところがいっぱいあって、満足度がものすごく高い。劇団ひとりが原作を美しくまとめ、まさに笑って泣ける見事なエンターテインメントに仕立てた。その才能も讃(たた)えたい。

師匠・深見と弟子・たけしの関係性にキュン

繰り返すがほんとうによくできている。やっぱりこのような特定のジャンルを扱った作品はその内情を知っている人でないとかゆいところに手が届かないものである。ちょっとした描写にリアリティーが滲(にじ)んでいるような気がした。それでいて一見(いちげん)さんお断りみたいなマニアックなものになることもなく、誰もが楽しく見ることができて、しかもちょっとキュンとなる青春映画になっている。このキュンは恋愛もののそれではないが、先輩深見と後輩たけしの関係性にはキュンとなるはず。 タケシを厳しく鍛える深見。でもそれは愛情である。タケシもそれをわかっているし、なんといっても深見のコントをリスペクトしているから、彼の元で修業をコツコツ続けるのだ。深見の生きる美学のようなものがタケシのなかにどんどん染み込んでいく。 やがて世間的な人気の面でも収入の面でもいつしか師匠を抜いてしまっても、ずっと深見のことを立てるタケシ。ふたりの気遣い合いが尊い。こんな師弟関係に憧れる。 もしもこの作品にジェンダー不平等があるとしたら、芸人の矜持や師弟関係の浪漫に満ちた彼らの世界に決して女が踏み込めないことである。なんてことを言うことすらおこがましくて申し訳ないけれど。
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大泉洋がおしゃれでかっこいい
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