――人間にはさまざまな面があるので表現が難しそうですよね。
森田:印象が一個あったとしても、それが何面にも見えるようにキャラクターを作り上げることが難しいです。でも、それは人としてみんな持っているものだから、どのキャラクターにもあるんです。猟奇的な殺人者もただ単に殺人をしているだけではなくて、そこまで生きてきた生活や人生、そこで培ってきたものがある。それが組み合わさってひとつの人間なので、そこまでお芝居で見せることは難しかったですね。
――監督はテイクも多かったそうで、これだけ多面的にキャラクターを引き出そうと試みる現場も珍しいのではないですか。
森田:それは本当にありがたく思いました。多くの時間をかけてお芝居を見てくれて、最大限のものを引き出してくれました。それは監督だけではなく、その場にいるスタッフさんたちみなさんに感じたことでした。次はもっといいものをと、作りたいものを作ろうとしている。その一員になれたことはすごくうれしかったです。幸せなことだと思います。
――俳優としては、どんなプラスになりましたか?
森田:いい意味で演じることがよくわからなくなったかもしれません(笑)。それは凝り固まっていたからかもしれないのですが、たとえばあるシーンの理解が本番で変わることがよくありました。どういう方向にも行けて、どういうふうにでもなれるものだなということを、実感として気づいたんです。「演じてるって、なんだろう?」とすごく考えさせられました。
でも、本番で予想しない感情が出てきて、セリフもどんどん足されて引かれて、ちゃんと生きているなって思える現場はなかなかないので、ありがたいです。何度もテイクを繰り返して演出が体に馴染み、入っていく。その感覚は初めてのことだったと思います。
――俳優としての活動は10年目に入るそうですが、この現在のブレイク状態については、どう受け止めていますか?
森田:自分では実感がないんです。ありがたいなと思いつつも、いつなくなるかわからないお仕事だと思っているので、次にちゃんとできなければ「終わるぞ自分!」と思いながら日々やっています。なので手放しでは全然喜んでいないんです。でも、こうやってお仕事をいただけるようになったのは本当に最近のこと、ここ3年くらいのことなんです。どれだけお仕事をもらうことが大変だったかも経験しているので、ものすごく幸せな状態だとは思っています。
――苦労した分、仕事のありがたみがよくわかるわけですね。
森田:オーディションを受けてもなかなか受からなくて、受かることがどれだけ大変かも身に染みてわかっているので、オファーでお仕事をいただけることに本当に感謝です。お芝居もこれでいいのかと毎回不安にもなりますが、任せていただけたというありがたみはあります。毎回、毎回、感謝して撮影に臨んでいます。