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岩田剛典の“令和版・浅見光彦”が超絶カワイイ!魅力を岩ちゃん愛たっぷりに解説

ミステリードラマとの相性

 岩田は、サスペンスやミステリーとの相性が非常にいい俳優である。『去年の冬、きみと別れ』(2018)では復讐の鬼と化す主人公をサスペンスフルに怪演し、ディーン・フジオカと共演した月9ドラマ『シャーロック アントールドストーリーズ』(2019、フジテレビ系)では、ディーン扮する獅子雄の相棒・若宮役を務め、ホームズとワトソンのブロマンス的な名コンビを体現した。  とはいえ、肝心の名推理はホームズばりの明晰な頭脳の持ち主である獅子雄の役割であり、若宮はどちらかと言うとドジなキャラクターに徹した。それでも時に若宮が思わぬ推理のヒントに気づかせることがあり、それはちょうど古畑任三郎に例のどうしようもなく間抜けな今泉がやっぱり必要というコンビ関係に似ている。 「軽井沢殺人事件」には信濃のコロンボなる刑事(伊藤淳史)が登場し、浅見に助力するが、基本的には浅見ひとりで鋭い推理を展開する。岩田にとっては、単独で名推理を披露する名探偵役のまさに独壇場となったわけだ。

シリーズ生誕40年に感じる“夢の後味”

 名探偵・浅見光彦は、ルポライターとして取材に訪れた場所で必ず殺人事件に遭遇してしまうのが最大の特性だ。兄が刑事局長であるとはいえ、民間人にすぎないのに、好奇心からどんどん事件に首を突っ込んで危ない橋を渡っていこうとする。  しかし、この民間人だからこそ、警察の取り調べとは違い逆に事件関係者たちが身構えることなく彼に何でも簡単にべらべら喋ってしまうところに本シリーズの面白さがある。  日本有数の別荘地・軽井沢の旧伯爵邸で起きた今回の殺人事件でも、刑事の事情聴取を訳ありな物忘れで切り抜けようとする伯爵令嬢(名取裕子)が、なぜか浅見には不思議と口を開いてしまう。  今年で50年目となる「あさま山荘事件」のおどろおどろしい記憶を引きずったふたつの殺人を巡る事件の真相が明かされるときにも、やはり彼女の口からは、「なぜかしら、初めて会ったときから、あなたにはすべてを話してしまう予感がしていた」とため息がちに、隠されていた過去が浮かび上がる。  過去と現在がクロスする何ともロマンスが香る難事件だったが、ルポライターらしい客観的な視点で事件を締めくくる浅見のナレーションには不思議な心地よさを感じた。  その声の持ち主はもちろん岩田剛典その人で、岩田のナレーションの心地よさは、令和版・浅見光彦としての彼が、「後鳥羽伝説殺人事件」から続く本シリーズ生誕40年に残した“夢の後味”ではなかっただろうか。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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