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ダンブルドアのゲイ設定が公式の事実に。『ファンタビ』最新作が描いた“愛の物語”

「心では分かっているはず」

ダンブルドアの秘密 ダンブルドアの愛は、非常に深い。それは、彼が、愛する人を失う悲しみを知っているからだ。愛には実にさまざまな形があるけれど、失った後に気がつく愛が一番深く、尊いように思う。でも、誰もがダンブルドアのような過酷な体験をしているわけではない。ダンブルドアが養った愛の美学は、誰にでも理解できるものではないが、一方で、誰もが愛を手にすることができるのもまた確かなのだと、ローリングは本作を通じて伝えようとしている。  結末に触れるので詳述は控えるが、グリンデルバルドとの戦いの後、ニュートの助手バンティ(ヴィクトリア・イェイツ)が、非常に素晴らしいことを言う。これはさすが、原作者がシナリオを担当した台詞への思い入れと細やかな配慮だ。 「失って初めて大切さに気づくことがある」 ニュートは言う。バンティは意外にも「そうでしょうか」と疑問を投げ、「心では分かっているはず」とだけ言う。  バンティの言葉には、実感がこもっていて、非常に勇気づけられるものがある。愛はすべての人が持ち、すべての人に開かれている。そして、今感じている目の前の愛を大切に生きることが誠実な態度なのだと、そんなふうに筆者には響いてきた。

愛の放浪者の「実像」

ダンブルドアの秘密  魔法界史上もっとも偉大な魔法使いの115年の生涯は、愛を生き、死に貫かれたものだった。想像するに、貧困に苦しんだローリング自身の過酷な現実生活を反証的に創作していった夢の魔法世界執筆の途中、彼女がときに筆を止めて、想いを馳せたのはダンブルドアの人物像だったのではないだろうか? 「ダンブルドアが求めた愛とは、いったいどんなものなのだろう?」、あるいは「ダンブルドアは、みぞの鏡にいったい何を見たのだろう?」、そしてさらに「“ほんとうの愛”とは?」とローリングは自問を続け、およそ20年のときを費やしてきた。  長い歳月の中で繰り返されたダンブルドアとの対話を通じて、愛の絶対的な偉大さを描き続けたローリングは、たぶん、ダンブルドアに特別な憐憫(れんびん)の情を移している。そんなローリングもまたダンブルドアを愛するひとりとして、『ダンブルドアの秘密』でひときわ心ときめかせただろう場面。我が愛すべきダンブルドアが、まるでチャップリンのように切なく歩いていく後姿(歩き出す瞬間のジュードの視線と表情に注目!)には、ロンリーな愛の放浪者ダンブルドアの「実像」が映し出されていたように思う。 【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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【公開情報】
ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』は4月8日(金)全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
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