横浜流星の「恐怖すら覚える演技」がスゴい。誘拐事件を描く『流浪の月』
憔悴していく横浜流星の名演
携帯電話の待ち受けを変えた意図
空手の元世界チャンピオンでもあり、自他とともに認める「硬派」な横浜流星は、女性に甘えるという感覚がなく、そもそも男性は女性に甘えないという考えを持っていたため、広瀬すずとリハーサルを重ねてもなかなか「殻を破れない」日々が続いていたそうだ。しかし、演じている亮という役「らしい」宴会芸を披露して広瀬すずが笑ってくれた日に、その殻を破ったようにスタッフが思えたこともあったという。
横浜流星は、原作を初めに読んだときは、誘拐犯である文目線だと、自身の亮という役を「この男、なんなんだよ」と相容れない感情を抱いていたものの、亮目線で読むと「彼にも悲しい過去があり、だからこそ更紗を愛して守り抜きたいと思っている」と共感もできたという(「Music Voice」より)。李相日監督の言うところの「人間臭く脆さのある」役柄を、彼は原作を読み込むことで自分のものとしたのだろう。
さらに横浜流星は、撮影期間中に携帯電話の待ち受けを広瀬すずにしていたそうだ。その意図は、「それぐらい(恋人の)更紗のことしか考えないようにしようとした」「亮は愛に飢えているから、相手の愛を求めている」「“更紗を守りたい”という一心だけを大事にすればいい」ということだったという(「MANTANWEB」によるインタビューより)。それもまた、恋人への「愛情」という行動原理が根底にあり、それが歪んだ形で表れる役柄には、適切な役作りであったのだろう。
【公開情報】
映画『流浪の月』は全国にて上映中。
(C) 2022「流浪の月」製作委員会
映画『流浪の月』は全国にて上映中。
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