Human

末期がん患者に医師が動画の発信をすすめる理由「孤独を忘れ癒されることができる」

症状や治療経過は千差万別。主観である点も考慮すべし

がん患者

押川勝太郎医師

 ただ、一般視聴者ががん患者の発信を受け止めるにあたっては、注意すべき点があるという。 「これまで若年性のがん患者の方は少数派で、孤立しがちでした。そしてお年を召された方は動画配信する気力や発想が一般的には乏しいですが、若年性の方はがんで人生設計が目茶苦茶になったという怒りもあるし、手軽に始められるのでインパクトが強い動画になりがちです。  人はもともと、映像からの影響を受けやすいため、健康体の人がそれを見て『最近調子が悪いのは自分もがんだからでは』と疑心暗鬼にかられたりするという問題もあります」

健康なときに聞いたがんの情報は、間違いと思うくらいがちょうど良い

 また、一口に「がん」といっても無数の種類があり、同じ部位やステージでも症状や治療内容は人によって異なる。抗がん剤治療および副作用を抑える方法も以前とは格段に種類が増え研究も大きく進んでいる。 「がんはドラマなどでも必ず悲惨な最期を迎える描写になっていますが、実際は完治することも多い病気です。また、治った人の多くは同情されたくない気持ちから、がんであったことを公表しません。  しかし、心理学用語では『アンカリング』と言いますが、最初に知った情報に固執してしまい、がんが判明したときに初期選択を間違えることがままあります。『抗がん剤だけは絶対やりたくない』などが典型的です。  今は抗がん剤の副作用である吐き気を止める薬が昔と違って複数できており、それ専門の学会もあるくらいです。ですから、健康なときに聞いたがん関連情報は、自身にとっては当てはまらず、全て間違いと思うくらいがちょうど良いのです」  がん患者の配信は、一般視聴者にとってもがん情報リテラシーを高めてくれるものといえるだろう。 【押川勝太郎氏】 国立がん研究センター東病院研修医を経て、宮崎善仁会病院勤務。2010年、NPO法人宮崎がん共同勉強会を発足。YouTubeで「がん防災チャンネル」も運営する 取材・文/タカ大丸 モトタキ 和場まさみ 撮影/アセティア
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ