BLを誰も否定しない“優しい世界”…。58歳差の友情を描く『メタモルフォーゼの縁側』
小さすぎてなかなか気づかない奇跡
本作で描かれた立場も年齢も超えた友情は、言うまでもなくBLという題材に限らない。創作物や趣味に触れて、ただそれだけでも幸せだったのに、それが好きな人同士の一生ものの出会いをもたらしてくれることは現実にもある。本作はその出会いと友情と、その先にある“小さな奇跡”をも肯定してくれるのだ。
その小さな奇跡は、すべての好きなものがある人の日常および人生に、少なからずあるものだが、小さすぎてなかなか気づかない。それを今一度認識させてくれること、共通する趣味を持つオタクな友だちがいたり、“推し活”をしている人たちが自己肯定できることこそ、本作の最大の意義だろう。
さらには、巡り巡っての小さな奇跡「だけじゃない」ことも本作は肯定してくれる。それもまた、すべての人の日常および人生で起こりうることであり、もはや肯定を超えて祝福をしてくれるような優しさに、震えるほどの感動があったのだ。
悪い人がひとりも出てこない物語
ヒナタカ
WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:@HinatakaJeF


