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ランドセルの無料配布、なぜ全国に広まらない?40年以上続ける日立市に聞いた

誰もが同じスタートラインに立って学校生活を迎えられる

ランドセル――各児童の家庭環境や経済状況などによって生じる問題にも配慮されているのかなと思いました。 そうですね。小学校は義務教育ですので、児童の間でなるべく差を生まないようにすることも大事なのかなと思います。誰もが同じスタートラインに立って学校生活を迎えられるという点では、教育面でも配慮されているように感じています。 ――保護者の方からはどのような反応をもらっていますか? 物価が高騰しているなか、経済的な負担を感じるご家庭は増えている印象です。ランドセルだけでなく、体操服や文房具など、いろいろなものを買い揃える必要があるので、この取り組みに対して感謝の声をいただいています。そういった意見をいただくことで、ランドセルの贈呈が市民に浸透してきているのだと実感しています。 ――この取り組みが広がっている事例などはありますか? 日立市では、令和2年度から新たに中学生を対象にスクールカバンを贈呈する取り組みを始めました。ちょうど3年前から始まり、今年で1~3年生までにカバンが行き渡っています。こちらも大容量で丈夫な作りでできていて、好評の声をいただいています。また、日立市が先駆的にランドセルの贈呈を行い、市民に受けいられていることで、近隣の自治体でも同じ施策が導入されつつあります。 ――日立市の取り組みが全国の学校にも広まったらいいなと感じたのですが、ランドセルの贈呈が広く展開されない考えられる理由などはありますか? あくまで個人的な意見なのですが、公的な機関が無償で配布することで、ランドセルという1つの大きな市場が縮小してしまうといった懸念があるのではないでしょうか。ランドセルに限らず、民間企業の経済活動に何かしら影響を及ぼすことに行政は慎重になると考えられます。われわれは昭和50年に始めたので、当時の経緯について詳細には把握していませんが、新たに導入するとなると少し状況は変わってくるのかもしれません。

一番は「この取り組みを継続していくこと」

ランドセル――市民から何か要望はありますか? 一番はこの取り組みを続けてほしいという意見です。ほとんどの小学生が、日立市の贈呈したランドセルを使っていますので、そういった意味では、教育委員会としてもこの取り組みを継続していきたいと強く思っています。 ――SNS上でもランドセルの無償配布について話題になっていたのですが、市外からのコメントや意見などももらいましたか? ランドセルが高価なものとなってきている現状で、「お祝いとしてランドセルをもらえることは羨ましい」「ぜひ、自分の市町村でも取り入れてほしい」とのお声を目にしました。市民だけでなく、市外にいる人からも受けいられている点は嬉しい限りです。 ――最後に、今後の展望についてお聞かせください。 市民に浸透しているからこそ続けられている取り組みですが、同時に市の財政は必ずしも余裕のあるものではありません。そのような状況においても、市民の要請に応えられるよう、今後どのような状況になろうとも、ランドセルの贈呈は継続していきたいと考えています。 <取材・文/Honoka Yamasaki>
山﨑穂花
レズビアン当事者の視点からライターとしてジェンダーやLGBTQ+に関する発信をする傍ら、レズビアンGOGOダンサーとして活動。自身の連載には、レズビアン関連書籍を紹介するnewTOKYOの「私とアナタのための、エンパワ本」、過去の連載にはタイムアウト東京「SEX:私の場合」、manmam「二丁目の性態図鑑」、IRIS「トランスジェンダーとして生きてきた軌跡」がある。また、レズビアンをはじめとしたセクマイ女性に向けた共感型SNS「PIAMY」の広報に携わり、レズビアンコミュニティーに向けた活動を行っている。
Instagram :@honoka_yamasaki
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