――作品のラストでは「触らなくなること」だけが解決ではないんだなと気づかされました。
加藤:Yさんが抱きしめ続けたことで愛おしく思えるようになったからこそ、おおらかに見守られるようになったのだと思います。YさんとAちゃんとの間にいい距離感ができたのかもしれません。
――親子でもプライベートを尊重することは大切ですね。
加藤:子どもが自分の部屋で何かしていて、それが親に見せたくないことだったら親のほうも気をつけてあげたらいいと思います。Yさんはしっかりノックをしたり、手がふさがっている時はわざと大きな足音を立てて「部屋に近づいているよ」とアピールしているそうです。
4歳だったAちゃんは幼な過ぎるため自慰をうまく隠せなかったけど、今は年齢が上がって隠せるようになった。「だったら私も見つけないように気をつけなくちゃ」とYさんは言っていました。
――YさんがAちゃんに嫌悪感を抱いていた頃の言動は、現在のAちゃんに影響していないのでしょうか?
加藤:当時のAちゃんはYさんの態度から何かを感じ取っていたかもしれません。でも4歳の頃のことなので、はっきりと記憶には残っていないようで、いまのところ影響は感じていないそうです。
小学生になった今は反抗期が軽く始まっているそうなのですが、まだまだ可愛いものなので問題なく親子関係を築けているみたいです。
――読者からの反響で印象的なものはありましたか?
加藤:否定的な意見もすごく多いのですが、共感してくださる方や「自分が子どもを持った時に気をつけたい」という声もたくさんいただいています。
すごく多かったのが「私も子どもの頃していました」という方や「私の子もしているんです」という声です。先日いただいた感想で「自分自身は我が子が触っているのを気にしていなかったけど、世の中にはすごく気にするお母さんがいるのが分かった。もし周りの友達が悩んでいたら気をつけてあげようと思った」という方がいました。
あと読者の方で、ご友人が娘さんの自慰に悩んでいるので「何かのヒントになればと思ってこの本をプレゼントしたい」と仰ってくれたことがあります。
――「私だけじゃないんだ」と思える方が増えるといいですね。
加藤:いただいたメッセージでも、そういう声がすごく多いです。Yさんが「世の中のお母さんに、悩んでいるのは自分だけじゃないと思えるように漫画にしてほしい」と言ってくれたことが漫画を描くきっかけだったので、本当に嬉しいです。
――これから、この作品をどんな方に読んでほしいと思いますか?
加藤:実際に子どもが自慰をすることに悩んでいる方に読んでいただきたいです。あとは今まで「幼児自慰」を知らなかった人にも「こういうことがあるんだ」と知ってもらうきっかけになったらいいなと思います。知ってもらうことでYさんのように一人で抱え込んでしまうお母さんを減らせたらと思います。
また、友人の心理士さんが「専門家の間でも話題にしにくいことなので、専門家にも読んでほしい」と仰っていました。だからそういう方にも読んでいただけたらいいなと思います。この本を読んでいただいくことで話題にしたり、相談しやすくなるといいなと思っています。
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自慰をする4歳の娘に嫌悪感が…母親がどうしても見守れなかった理由。作者を取材<漫画>
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「こんな小さな子が…」4歳娘の“自慰行為”に苦しんだ母親を描く。作者を取材<漫画>
<取材・文/都田ミツコ>
都田ミツコ
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。