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22歳で遺品清掃人になった女性。初仕事で“死臭”にひるまなかったワケ<漫画>

故人が安心して天国に行ける手助けをする

仕事中の小島美羽さん

仕事中の小島美羽さん

――遺品整理人となってから、死に対する考え方は変わりましたか? 小島美羽さん(以下、小島):この業界に入る前と後で、考え方は変わりました。例えば、今までは幽霊を怖いと思っていましたが、この仕事に携わってから同じ人間だと思うようになりました。目に見えないけど、私たちと同じようにその場にいる。そう思えば、怖がる必要もないのです。 ――亡くなった人や幽霊など、世の中にいないとされているものも同じ人間として認識しているのですね。 小島:孤独死で亡くなった人にも同じことがいえます。私は、同じ人間として故人の気持ちに立っているので「自分が突然亡くなったとき、どのような気持ちになるのだろう」と考えます。自分がいなくなることで家族に迷惑をかけてしまうとか、いろいろな感情が生まれてくると思うんですよね。  それだと安心して故人も天国にいけないし、ご遺族も心配したまま過ごすことになります。なので、少しでも私たちが前に進めるようなきっかけになりたいという想いがあります。 ――世の中では孤独死がネガティブなイメージで語られることが多い印象ですが、そのことに関してはどうお考えですか? 小島:死は誰にでも平等にやって来るものですし、それぞれ事情を抱えるなかでさまざまな死に方があるのは自然なことです。世間一般的にいうと、家で1人で亡くなった人は悲しくて孤独な人生を送ってきたと思われるかもしれませんが、なかには家で亡くなることを望む人もいます。  私も1人でいることは好きなので、今まで過ごしてきた自分の部屋で最期を迎えることは幸せなことだとも思います。誰にでも、死に場所や死に方を自分で選ぶ権利は与えられるべきではないでしょうか。

孤独死のタブー視

小島美羽さんのミニチュア作品

小島美羽さんのミニチュア作品

――漫画のなかでは、孤独死の現場を再現したミニチュアも印象的でした。小島さんが作品を制作し始めたきっかけについて教えてください。 小島:自社の製品やサービスを紹介する葬祭業界の展示会が2015年に開催され、私たちの会社も出展しました。当時は「遺品整理」や「特殊清掃」という言葉すら浸透していなかった時代だったので、一般の人にも孤独死の現状を伝えられるいい機会だと思いました。  ですが、現場の写真を見せながら私たちの仕事について説明しても「結婚して家族がいるから孤独死するはずがない」「きれい好きだから家がゴミ屋敷になるはずがない」と身近に起こり得る孤独死を他人事として考える人がほとんどだったんです。  より多くの人が問題視するためにどうしたらいいか考えていたとき、現場をそのまま写した写真だと生々しすぎて見られない人がいると感じました。そこで、本物ではなくミニチュアの世界で現場を再現すれば、故人のプライバシーを守れるし、より多くの人の目に触れられると思い、次の展示会に向けて制作を始めました。 ――2015年当初は孤独死の現状が浸透していなかったとおっしゃっていましたが、そこから認識の変化は感じましたか? 小島:変わってきました。今ではテレビやネットニュースで孤独死が取り上げられる機会が増えたなと思います。やっと日本で孤独死が誰にでも起こり得るものだということが認識され始めたのかなと。  今でも地方に行くと孤独死を隠そうとする人もいますが、小さなコミュニティなのでバレてしまうことがほとんどなんですよね。なので、開き直って周りに伝える人は多い気がします。オープンであるというよりかは、本心では隠したがっている印象ですが、最終的にカミングアウトする人は増えてきましたし、カミングアウトしたら実は相手も親族の孤独死を経験したご遺族だったという人もいるようです。  昔は孤独死したご遺族を噂したり、珍しいものとして認識されていましたが、最近では当たり前とまではいかなくても、隠す理由がないと考える人やカミングアウトしやすい環境は増えてきたように思います。
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孤独死は防げなくても、早期発見は目指せる
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