宇垣美里「地獄味あふれる現実がぐりぐりと心をえぐり…」/映画『マイ・ブロークン・マリコ』
元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。
●作品あらすじ:ある日、ブラック企業勤めのシイノトモヨ(永野芽郁)を襲った衝撃的な事件。それは、親友のイカガワマリコ(奈緒)がマンションから転落死したという報せでした――。
幼い頃から父親や恋人に暴力を振るわれ、人生を奪われ続けた親友に自分ができることはないのか…。シイノがたどり着いた答えは、学生時代にマリコが行きたがっていた海へと彼女の遺骨を連れていくことでした。道中で出会った男・マキオ(窪田正孝)も巻き込み、最初で最後の“二人旅”がいま、始まる。
平庫ワカの同名コミックを、『ふがいない僕は空を見た』『浜の朝日の嘘つきどもと』のタナダユキ監督が映画化した本作を宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣美里さんの寄稿です。)
残された者が死んでしまった人のためにできることなんて、ほとんどない。別れはいつも突然で、受け入れることなんていつまでたってもできなくて、だから、シイノはマリコの遺骨と共に旅に出た。
幼なじみの自殺をニュースで知ったシイノは、マリコを長年虐待していた父親から遺骨を強奪し、生前彼女が行きたがっていた「まりがおか岬」を目指す。道中マリコからの手紙を読み返し、シイノは彼女との記憶を辿(たど)る。
弔いのようなその行為から浮かび上がるマリコは、面倒くさくて、重くて、でも一番の親友だった。もっともっと愛していると伝えればよかった。シイノにだってマリコしかいなかったのに。
マリコが死んでから、どのシーンからもシイノの言葉にならない「なんで」が悲鳴のように響いているよう。一方の垣間(かいま)見えるマリコの人生はあまりに不憫(ふびん)で、もはやきっかけなど不要なほどに彼女が傷つき壊れ切っていたことがわかる。
地獄味溢(あふ)れる現実の解像度が高すぎてぐりぐりと心を抉(えぐ)り、シイノが爆発させるごちゃまぜで剝(む)き出しの感情が沁みて沁みて、涙が止まらなくなった。
そんな宇垣さんが映画『マイ・ブロークン・マリコ』についての思いを綴ります。
言葉にならない「なんで」が悲鳴のように響いているよう
1
2