発達障害の人は「遅刻癖がある」「マルチタスクが苦手」「集中力が続かない」など、生活や仕事が困難となるようなさまざまな“困りごと”を感じている人がほとんどです。
そのため五十嵐先生は「発達障害の治療では困りごとを解決することが一番重要」と話します。
「発達障害傾向のある人は、日常生活の中でさまざまな“困りごと”があって、それを解決したくてクリニックに行きます。診断がゴールではなく、困りごとを解決するために、診断をするのです。それから回数を重ね、解決策をじっくりと考えていきます。
発達障害の人たちは小さい頃から困りごとを抱えていて、周りから『普通にやりなさい』と言われてもその『普通』が分からない。必要に応じて薬物治療も行いますが、困りごとについて医師が謎解きをするのが、治療でもっとも重要なことだと思います」
しかし、困りごとの解決までしっかりと付き合ってくれる病院や医師を見つけるのはなかなか難しいといいます。
「サイトや口コミを見ただけで判断するのは難しいと思います。何度も通ってみて失敗だなと思うこともあるでしょう。『これがそろっていたら最良の医療機関です』とは言えるようなチェック項目は残念ながら、ないのです。
ただ、一番大切なのは、じっくりと話を聞いた上で診断してくれ、困りごとの相談にも親身になってのってくれること。大きなクリニックだと、医師が何人もいて、行くたびに違う医師にあたることがあります。カルテはあっても、すべてのやりとりが記入されているわけではないので、前回と症状が変化しているかどうかわかりづらい。できれば1人の医師が熱心に経過を追ってくれるようなクリニックがいいと思います」
ブレインクリニックのQEEG検査は税込1万4300円、TMS治療は一番少ない8クールで税込15万5000円と、かなり高額です。来院から帰るまでの時間はサイトの記載があり、QEEG検査を行う初診が1時間ほど、TMS治療を行う再診は40分~1時間で帰ることができるといいます。
「発達障害の診断や治療をきちんと行おうとすると、心理士の人件費もかかれば、時間もかかります。経営者としての目線で言えば、もっとも重要である“困りごとの解決”は、それ自体はあまり収益にならないという現実もあります。そういった意味では、ブレインクリニックの診療内容は、効率よく収益を見込めるビジネスモデルだと考えることもできるかもしれません」
また、ブレインクリニックにはPMS(月経前症候群)の外来もありますが、PMSを改善するとされている低用量ピルの処方を行っていないこともサイトに明記されており、こちらも疑問を抱かざるをえません。
五十嵐先生に話を聞いた後、ブレインクリニックの問い合わせフォームに、検査や治療の実態やQEEG検査・TMS治療の発達障害に対するエビデンス等について質問を送りましたが、期日内に回答は得られませんでした。
<取材・文/姫野桂>