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生理の血が10分に1回流れる…女性の日常を“普通”に描く映画『セイント・フランシス』がスゴい

 現在、映画『セイント・フランシス』が全国の劇場で公開中だ。本作は米映画批評サービス「Rotten Tomatoes」で99%という圧倒的な批評家からの支持率を得ており、日本の観客からも公開から3週間以上を経てもなお絶賛の声が続々と届いている。
©2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED

『セイント・フランシス』©2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED

 その先進的な特徴は数え上げるときりがないが、特に30代の女性の生理を隠さずに、しかも10分に1回のペースで血が出るほどに、真正面から描かれていることは大きい。  女性にとっての日常的な現象である生理が、いかに通常の映像作品で隠されているか、ということも思い知らされたし、それ以外のあらゆる「普通」な描き方から、大きな学びが得られる内容でもあったのだ。具体的な映画の魅力を紹介しよう。 【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます

6歳の子どもとの、年の離れた友達のような関係

©2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED 主人公のブリジットは34歳。親友は結婚して今では子どもの話題に夢中だが、自分は大学を1年で中退しレストランの給仕を続けていて独身。うだつのあがらない日々を過ごしていた彼女は、短期で6歳の少女フランシスのナニー(子守り)の仕事に就くことになる。  物語の主軸となっているのは、大人と子どもの交流の物語だ。少女フランシスはちょっと小憎らしさもあるが、同時に利発でかわいらしい。ブリジットはいい年をして何者にもなれないでいる自分にコンプレックスを感じているが、フランシスはそんなことをまったく気にしておらず、年の離れた友達のように接してくれる。その2人の関係性の変化を追うだけでも、楽しく観られる内容だろう。

同性同士のカップルを「当たり前」に描く

©2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED フランシスの両親はレズビアンのカップルだ。主演と脚本を務めたケリー・オサリヴァンは、映画のひとつのねらいに「同性同士のカップルの子育てをノーマル化、普通にあることとしてとらえたい」(「CINRA」より)あると語っており、実際に劇中ではそのことをまったく大げさに描いてはいない。主人公のブリジットは当たり前に受け入れているし、娘のフランシスは両親それぞれを「ママ」と「マミー」と自然に呼んでいたりもする。  劇中で彼女たちが直面する悩みは、子育て、産後うつ、日々の暮らしの中で受ける人種差別など、セクシュアリティに関わらず誰もが抱える悩みだ。LGBTQ+のカップルは現実の社会で普通に暮らしていて、それぞれで自分たちと変わらない悩みも持っているかもしれないという、当たり前ではあるが見過ごしがちな重要な知見も得られるだろう。  また、両親の1人は、同性愛を認めていないカトリック教徒でもある。これについて、ケリー・オサリヴァンは「たとえ宗教に自分の存在を認められていなくても、信仰し続けることができるという、カトリックの別の面を見せたかった」と語っている(「GINZA」より)。宗教を悪にしてしまう単純な構造にはせず、「信仰心と同性婚の権利の両立」もできるのかもしれないと、希望の持てる描写になっているのだ。
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中絶をあえて「ライト」に描く
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