
かつて髙嶋さんは、80歳を過ぎた高齢者たちが悔やんでいることとして「人の目を気にして、やりたいことをやらなかった」というのを聞いたことがある。それが心に残っていて、そんなせつない思いはしたくないと感じた。
だからやりたいことはやると決めたのだ。
「その道のプロが言ったんです。変態は崇高な精神だけど、変質者は犯罪だ、と。まさにそうですよね。人に無理強いはしない、人に迷惑はかけない。それが徹底されていれば何の問題もないと思う。
僕はSMに出会って自分を解放することができた。精神が自由になれたというか……。だから何かやりたいことがあったり興味を惹かれるものがあったら、臆(おく)せず飛び込んでいけばいいと思うんです」
『愛してる!』のメッセージはまさにそこにある。“世間体”など気にせず、自分の好きなことを追求しよう、とこの作品は明るく語りかけてくる。
舞台挨拶でも、髙嶋さんは自身の体験を交えながら元気に映画をピーアールした。世代も性別もバラバラの満席の客から、大きな笑い声と拍手が起こった。

『愛してる!』「ROMAN PORNO NOW」
誰もが実は息苦しい思いをしている現在、本当の意味での多様性を求めるなら、まず自分から行動を起こしてみることが必要なのかもしれない。その先に「自由」が待っているのではないだろうか。
<文&写真/亀山早苗>