受験を控えた兄・悠人(横山裕/幼少期・海老塚幸穏)に「合かく」と書いた手作りの“けん玉”をプレゼントする舞。学校を休みがちな舞を、優しく励ます友だちのお隣さん。思い悩むめぐみの隣にそっと寄り添い、環境を変えることを提案する父・浩太(高橋克典)。浩太は、めぐみと絶縁状態にあった実母・祥子へ、毎年の年賀状で家族の近況を伝えてもいました。
『舞いあがれ!』にはそんな、ささやかだけれども日常を生きる人々の思いやりが丁寧に描かれているのです。子育てに正解はないし、きょうだいで性格も違うし、親子といっても何でも分かりあえるわけではない。だからこそ、互いを想い、尊重しながら懸命に家族の幸せを模索する登場人物たちの姿がとにかく愛おしく、視聴者の心に響くのだと思います。
現実に押しつぶされそうな母、三世代の母娘のつながり
第1週のサブタイトル「お母ちゃんとわたし」は、ヒロイン・舞と母・めぐみのことだけでなく、めぐみとその母・祥子の関係も合わせた
三世代の母娘のつながり、そして距離感の難しさを描いていました。
夫の工場の仕事も手伝いながらも、受験を控える悠人と発熱に苦しむ舞というふたりの子育てに奮闘するめぐみ。彼女からにじみ出る生活の疲れと子育ての苦悩を、永作博美は見事に表現しています。
家族のために頑張るも、現実に気持ちが押しつぶされて台所で涙する姿。駆け落ち同然に飛び出した実家の母への葛藤を抱きながら「五島に帰ってもよかかな…」と電話する姿。舞に対して過剰に心配をくり返してしまう姿。いずれも、実にリアルでした。
第5話で「舞を心配しすぎ」と祥子に諭(さと)され、自らを振り返りながら別れを決意しためぐみ。寝るとき、背中から抱きついた舞を、抱きしめるのではなくそのまま手を握った仕草と表情。そして、起きた舞と向き合い微笑む瞬間。一連のシーンでめぐみの“母”としての葛藤と強さを見事表現しており、心動かされました。
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