
「Best Friend’s Girl」(rhythm zone)
岩ちゃんが、久遠役によってどうイメチェンしたかと言うと、周到に塗り込まれたメイクによって、肌を黒く印象を変えたわけだ。小麦色よりもさらに色が濃い、ガングロな岩ちゃん。でも、ガングロな岩ちゃんをみたのは、何もこれが初めてのことではない。正確には、久しぶりのことだった。
三代目JSBデビュー当時、デビューシングル「Best Friend’s Girl」(2011年リリース)のジャケットを思いだしてみる。色が黒いEXILEのイメージを受け継いだ三代目JSBメンバー7人全員が、まぁよく焼けている。中でもダントツなのが、褐色の肌が色っぽい岩ちゃんだったことを記憶している。
時を経て、三代目JSBは、徐々に白く染め上げられていった。ダントツな黒さを誇った岩ちゃんは、今度は格段に白くなる。先日10月12日にリリースされたばかりのソロ1stアルバム『The Chocolate Box』のファーストトラック「Only One For Me」のミュージックビデオをみると、髪色が明るい一方で、かつての肌の黒さがほんとうに嘘みたいだが、そこへ懐かしさを感じさせる久遠のガングロだった。
「久遠樹」の樹という名前自体にも、懐かしさを覚えずにはいられない。「樹」は、映画初主演作『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(2016年)で演じた主人公の名前と同名。“ガングロな樹”は、ダブルミーニングで原点回帰なのだ。
そんな原点回帰的な岩ちゃんの演技から受ける印象は、無駄がなく、とてもシンプルなもの。桐子に犯罪のやり方をレクチャーするときの久遠は、視線を動かす以外は、ほとんど無表情。それ以上の無駄な動きはない。
第1話は、あまり多くない出番の中でシンプルな視線の演技で通していたが、第2話では、強盗の方法を伝授する場面が大きな見せ場だった。屋上に上がってきたふたりは、水鉄砲と縄を用意して、実演練習する。縄で縛られ、水鉄砲をかけられる久遠の表情は、とくにエモーショナルなわけではないが、抑制された演技の裏に新たな表情を垣間見せた。
この屋上の場面、ひとつ確認しておきたいことがある。桐子に水鉄砲で撃たれるときの久遠のガングロが、図らずも白く薄められていることだ。これは、メイクが取れたとかではない。この場面を起点に、第1話では強烈にガングロな印象が強かった久遠が、ところどころ白く薄められている。
つまり、本作では、ガングロな岩ちゃんと色白な岩ちゃんとが、場面の差として共存している。この微妙な差異の不思議な印象が、原点回帰をより面白く、その先へ視聴者の想像を駆り立てていく。