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Vol.24 世帯年収2000万超えのパワーカップルが離婚。夫を苦しめ続けた妻の「要求」

「妻と似た女性」と再婚した理由

 遠山さんは離婚の数年後に再婚したが、再婚相手は大手商社勤めのキャリアウーマン。遠山さんいわく「奈津と同じ系統の、超ハイスペ女性」だそうだ。 「僕は常に刺激を求めてるんだと思います。新しい知識、新しい価値観、新しい世界。いつも何かを知りたくて仕方がない。知的でスリリングな会話をしたい。だから、今の妻からも怒られるしキレられますが、僕が欲しいものを得るためには仕方のないトレードオフかなって」  驚くべきチャレンジ精神、驚くべきバイタリティ。見た目だけでなく、心も若い。 「僕、精神的に余裕があるんだと思います。だからチャレンジできる」  なぜ、そんなにも精神的余裕があるのか? 「ある程度は、経済的な余裕から来ていると思います」  遠山さんの年収は、結婚時点で1000数百万円。奈津さんも同じくらいだったので、子供なし、世帯年収2000数百万円のパワーカップルだった。今のパートナーともその水準をキープしているという。経済的余裕がもたらす精神的余裕、金持ちケンカせず。思わず「上級国民……」と言いかけると、遠山さんはすかさず遮った。 「僕程度で上級国民だなんて言われてしまうこの国、ちょっと夢がなさすぎますよね

遠山さんの言葉に滲むもの

 店に入って3時間。ワインで舌の滑りが良くなった遠山さんは、雑談がてらこんな話をはじめた。 「僕、いわゆる『せんべろ』、とか、安い飲み屋に行くのが趣味なんですけど、こないだとある街の路地裏にあるモツ煮込み屋で“感動”したんです。隣に若いカップルが座って会話が聞こえてきたんですが……」 写真はイメージです 好奇心旺盛のキラキラした目で、楽しそうに話す遠山さん。 「男性はもともと自営業だったけどうまくいかなくて、少し前にサラリーマンになったみたいでした。女性が『会社どう?』って聞いたら、男性が自信満々に『ボーナスがあるんだよ!』って答えたんです」  興奮気味に続ける。 「その時に初めて、こんなにも違う世界があるんだって思いました。ボーナスがあるなんて当たり前じゃないですか。なのに『ボーナスがある』ことに感動する人間がこの世に存在するというのが、すごいと思って。これは発見でした」  驚いた。遠山さんに、である。「ボーナスがある」のは今のご時世、決して「当たり前」ではない。 「東京都の年収中央値が、570万とかでしたっけ。正直こっちは世帯年収2000万だから、そういう人たちと接点を持ったり、交流をする機会はまったくない。だからモツ煮込み屋みたいな世界の話って、ほんと新鮮で」  奈津さんが何に怒っていたのか、少しだけわかった気がした。 ぼくたちの離婚 Vol.24 上級国民の余裕】 <文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>
稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。映画配給会社、出版社を経て2013年よりフリーランス。著書に『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)、『オトメゴコロスタディーズ』(サイゾー)『ぼくたちの離婚』(角川新書)、コミック『ぼくたちの離婚1~2』(漫画:雨群、集英社)(漫画:雨群、集英社)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)がある。【WEB】inadatoyoshi.com 【Twitter】@Yutaka_Kasuga
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