「彼、稼げないのに“クリエーターはいいものを身につけなくちゃ”って言ってね。フェラガモとかアルマーニとか、
当時から一流ブランドのものばかり欲しがる人でした。食材もオーガニックがいいとかね。うるさくてお金のかかる人で。でも私には仕事もお金もあったので、好きにさせていました。彼のイラストの感性にほれ込んだ弱みですね」

彼に頼られること=愛情のような気がして関係は続き、妊娠して結婚。しかし彼は相変わらず稼げないし、毎日家にいるのに家事も育児もしない。すべてがルカさんのワンオペだった。当時はレギュラーの編集仕事も大量にあったため、文字通り“髪を振り乱して”汗水垂らす毎日だった。
「自治体の政策で、割と安くベビーシッターをお願いできたし、保育園にも運よく0歳児の時に預けられた。それでも仕事の時間は足りなくて、山のような“やることリスト”がなくならない毎日。彼はのんきにお金にならないイラストを描いてばかり。何度も“たまには手伝って”と言いましたが、ダメでした」
夫はずっと家にいるのに、娘を保育園に預けに行くのもお迎えもルカさん。夜は、終わらない仕事を気にしながらも夕飯を作ろうとするが、娘はワンワン泣きはじめる。なのに夫はのんきに「ご飯まだ?」と尋ねてきては、ゴミ出しひとつしない。もう彼女の精神状態はボロボロ。
2歳で母乳をやめたあとには、もともと好きだったお酒をまた飲み始めるようになり、いつしか昼夜を問わず飲むようになっていった。
「もうそのころから、すでに夫への愛情は消えていました。でも娘の父だし、離婚もめんどうくさそうだし、いつか彼が変わるかもしれないというわずかな期待もあり、そのまま暮らしていたんです。でも、いつも心には隙間風が吹いていたというか……なんで私は家族を養いながら家事も育児もぜんぶ背負っているんだろうと、胸のあたりが苦しくてたまりませんでした」