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ギネス認定の4歳の歌姫「ののちゃん」の歌を聴くと心が痛む理由

2歳5ヶ月での看板商品「いぬのおまわりさん」から変えられない

 それはひとえに「いぬのおまわりさん」が強烈過ぎたからなのだと思います。2歳5ヶ月にして看板商品を生み出してしまったために、それが不動の定番になってしまった。
 さらに今の時代はテレビだけではありません。ネット、SNSを通じて、“ヒット商品”がまたたく間に伝播(でんぱ)していきます。瞬間最大風速的な売り上げはその人自身と即座に結びつけられ、その場その場でキャラと価値が定められる。  2歳5ヶ月の歌は、そうした秒単位の取引によって成功を収めました。それゆえに、“ののちゃん”の看板で歌い続ける限りは、歌の型を変えることが出来なくなります。いわば纏足(てんそく。昔の中国で行われた、女性の足を小さくするために、幼いころから足の指を裏に折り曲げて布できつく縛り、発育をおさえた風習)のような制約の中でしか生かされない歌になってしまいました。

「崖の上のポニョ」大橋のぞみとは逆

 対照的なのが、中学進学と同時に芸能界から引退した「崖の上のポニョ」の大橋のぞみです。その時点での年齢と人格からしか生まれ得ない瞬間芸だと理解していた、見事な引き際でした。“歌手の子供”ではなく“子供が歌う”。冷静なコンセプトがやみくもに一人の女性を消費することから守ったのです。
「ののちゃん 3さい こどもうた」キングレコード

「ののちゃん 3さい こどもうた」キングレコード

 現時点で村方乃々佳さんにそのような逃げ道が用意されている雰囲気はありません。それはYouTubeチャンネルのファンシーな色使いからも見て取れます。  カラフルで楽しげな色彩を前面に押し出す。ことさらに商品性を強調される4歳児の心情は知る由もありません。 <文/石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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