Entertainment

朝ドラ「舞いあがれ!」の赤楚衛二は天使だ!“もっさり・ほっこり感”に心温まる

貴司の安定と赤楚君の水平

チェリまほ

©豊田悠/SQUARE ENIX・「チェリまほ THE MOVIE」製作委員会

 続く第4週、怪我をした由良冬子(吉谷彩子)に代わってなにわバードマンの飛行士になったまいは、体重制限をしながら日々のトレーニングに励む。一方、貴司は、仕事の疲れが出てきてすこしやつれ気味の様子。舞と久留美のバイト先であるカフェ「ノーサイド」に、休憩時間に来た貴司は、熱心に詩を書きつけた紙ナプキンを忘れていく。そこには「干からびた犬」とだけ書かれていた。  その夜、3人がうめづに集まると、貴司が「干からびた犬いうんは、僕のことや」と自分の状況を説明する。営業成績最下位で毎日上司にどやされている彼は、そういうツラい状況だかこらこそ、いい詩が書けるのだという八木のアドバイスを胸に前向きではある。ぽつりぽつり話す貴司にほっこりもする。  基本的には、『チェリまほ』(『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』)の主人公・安達の延長として貴司を演じているように見える、もっさり、ほっこりな赤楚君。この基本ベースのもっさり、ほっこり感があるから、貴司が仕事に募らせる葛藤も深刻な悩みには傾かない。しかもただ前向きなのではなくて、味わい深く楽天的な性格。貴司の精神の安定と赤楚君の水平の取れたバランスある演技がピタリと比例したのが、この貴司役だといえる。それは、舞が夢見る飛行機のように、どこまでも飛行を続けていけるだろう。

夜にだけ舞い降りてくる天使

 貴司が画面に登場するのが、決まって夜だということも見逃せない。特に肌寒くなってきた冬の時期、温かみがほしいなと思うと、もっさり、ほっこりをまとわせた貴司がひょっこり顔を出す。その何気ない表情は、まるで夜にだけ舞い降りてくる天使のようだ。  舞が人力飛行機の操縦桿を握り、新記録樹立に挑んだ第5週、29回で季節は移ろい、クリスマスシーズンになる。パイロットになりたいという新しい夢を抱きはじめた舞が、勉強を終えてひと息つこうと窓の外の空を眺めると、ちょうど向かいの窓も開いて、貴司が顔を出す。何となく会話を交わしていると、貴司に先輩から電話がかかってくる。彼は優しげな笑顔を浮かべて、暗い部屋に戻る。  クリスマスにまたいつもの3人で集まり、舞がパイロットになる夢を話していると、また貴司に電話がかかってくる、呼び出しだといって店を出た貴司の電話口では、先輩からの怒声が漏れ聞こえる。文学を愛する、この夜の天使は、ほんとうのところどんな気持ちでいるのだろう? 彼の気持ちを考えると、見ているこちらは、赤楚君みたいな優しげな眼差しで、つい貴司のことを見つめ、見守ってしまう。  第5週の最終話(30回)、年は変わり、貴司は、仕事はダメ、詩も書けず、唯一の憩いの場であったデラシネが閉店……。精神的苦境の中、八木は短歌にしたらいいとアドバイスするのだが、この夜の天使が第6週、いよいよ昼間の光の下に姿を現すようだ。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ