『silent』は鈴鹿央士の“失恋”に目が離せない!優しさと頼りなさの演技がイイ
今やテレビドラマの女王として主演を張る川口春奈と目黒蓮が共演するドラマ『silent』が、毎週木曜日よる10時からフジテレビ系で放送されている。
川口春奈が主演するテレビドラマはだいたい面白い。その面白さの秘密は、彼女が共演する相手俳優との見事な相性だ。記憶に新しいところでは『着飾る恋には理由があって』(2021年、TBS)の横浜流星、さらにこちらは映画作品だが、『一週間フレンズ。』(2017年)での山﨑賢人との相性も抜群だった。川口も相手の俳優も過不足なく光り、画面上を驚くほどすんなり爽やかに飛び回るのだ。
で、今回の『silent』で川口の相手役を務めるのは、今をときめくジャニーズ(Snow Man)の目黒蓮ときた。第1話冒頭、学生服を着た川口と目黒のつややかなこと。高校生にしてすでに深い愛を育んでいる紬(川口春奈)と佐倉想(目黒蓮)の雰囲気に思わず見惚れてしまう。ところがどっこい、時は経ち、大雨の朝、青羽が目覚めたベッドで隣にいたのは佐倉ではないのだ。目黒君の爽やかな目覚まし場面が見られるかと思いきや、見事に相手役の俳優がすり替わるマジック。
この意外な場面転換には、すっきり気持ちよく裏切られる。むしろ、裏切られてよかったのだ。なにせ紬の隣で寝ていたのが、目をくりくりさせた、これまたチャーミングな好男子・戸川湊斗(鈴鹿央士)だからである。
このチャーミングな湊斗を演じるのは、鈴鹿央士。鈴鹿君、22歳にして、すでにドラマや映画主演作多数というネクスト・ブレイクの大筆頭のような存在だ。彼の演技力とあのチャーミングな容姿をもってすれば、朝起きたベッドで、目黒君からすり替わっていても、なんの遜色ない。
湊斗も同じ高校の同級生で、紬が今付き合っているのが彼だ。先に家を出る湊斗を紬が見送る場面では、冒頭の目黒君以上に爽やかフェイスな鈴鹿君に、一気に視聴者の興味と関心は持っていかれる。この引きの強い爽やかさは、前述した『着飾る恋には理由があって』で川口と横浜が体現していたように、ベストな波長のカップリングを成立させる。ひとまず、目黒君のことは忘れよう。
と、思いたいところだが、ドラマの展開の常として、今彼の湊斗に対して元彼の佐倉が再び紬の心を捉えることになるのは、当然予想される。そしてここに湊斗の葛藤が浮かび上がり、鈴鹿君の演技が加速度的に面白くなってくるのだ。
高校時代には恋仲だった青羽紬(川口春奈)と佐倉想(目黒蓮)だが、卒業以来、佐倉が「若年発症型両側性感音難聴」を患い、耳が聞こえなくなってしまったことから、関係性が途絶える。それから8年が経った彼らのその後を高校時代の回想とともに情感たっぷりに折り込みながら描く本作。 2020年にジャニーズの9人組グループとしてシングルデビューした「Snow Man」のアイドル活動のかたわら、俳優業での活躍が目覚ましい目黒だが、佐倉の親友であり恋のライバルでもある戸川湊斗を演じる鈴鹿央士の演技が目を見張る。 「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、失恋の詩人のような湊斗役を全身で体現する鈴鹿の魅力に迫る。


