Human

1日で62億円を売り上げた女性経営者の戦略「ユーザーに楽しんでもらうことが重要」

岐阜県にある美顔器に特化した企業「ARTISTIC&CO. GLOBAL」の代表を務め、年商150億円の売り上げを達成している女性経営者の金松月(きん しょうげつ)さん。2021年の中国「独身の日」には1日で50億という驚きの売り上げを達成し、今年の売り上げもさらに記録を更新しました。どのようにしてそのような売り上げを成し遂げたのか、詳しくお話をうかがいました。 【インタビュー第4回】⇒年商150億円の女性経営者が“成功や失敗”にこだわらない理由
2年で年商150億円を達成した女性経営者の金松月

2年で年商150億円を達成した女性経営者の金松月さん

大規模セールが文化に

――中国「独身の日」とはどのようなものですか? 金松月さん(以下、金)「11月11日は中国では『独身の日』と呼ばれています。中国の大手通販サイトの「アリババ」グループが、その日に大規模なセールを始めたことがキッカケとなり、今ではその日になるとセールが行われるというイメージが強くなりました。 今は中国全土で行われており、消費者のみなさんはその日に消耗品も含めた色々な買い物をします。ちょうどアメリカのブラックフライデーみたいなイメージです。文化みたいになっていますね」

50億円で会社の価値を示す

――2021年には50億円の売り上げを目標とし、それを達成したと聞いています。それは想定していたことでしょうか? 「2020年の『独身の日』の売り上げは30億円くらいで、2021年では50億円にアップしました。50億円という目標を設定したのには理由があります。2021年の2月にARTISTIC&CO. の先代の創業者が亡くなりました。それは大変ショックな出来事でした。また、そのことによって、『この企業は大丈夫なのだろうか?』というまわりからの不安な目線もあったように思います。 だから、『創業者が残してくれたものは、一時的なものではなく偉大なものだから、私たちは大丈夫』と証明したいという気持ちがありました。そのような背景から、『ダブルイレブン(「独身の日」のこと)を目がけて頑張るしかない』という気持ちで、創業者の残したものの価値を示すためにも、50億円という数字を設定し、達成にいたりました」

売り上げが集中する「独身の日」

独身の日

※画像はイメージです

――「独身の日」の1日で50億円を達成したのでしょうか?すごいことですよね。 「11月11日に販売しているのは事実なのですが、実際は予約が10月20日くらいから入り始めます。消費者のみなさんは独身の日を待って買う、という訳なんです。だから実際のところは、1ヶ月分の売り上げをその日に集中させるというイメージの方が近いです。 だったらバラバラに売ってもいいのでは?と思う方もいるかも知れませんが、そのお祭りの日に集中させることで、皆さんの購買欲が高まるという効果もあります。日本で福袋に多くの人が並ぶのと同じようなイメージですね。中身がわかる福袋をその日に買う感じです」

安くするだけでは意味がない

――「独身の日」のセールの内容とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか? 「独身の日に行われるのは値下げセールだけではありません。もちろん、ブランドによっては半額など大幅値下げするところもあります。私たちもできる範囲内での値下げは行います。でもただ値下げするだけでは意味がないと思っているので、イベントとして、年1回のお祭りとしてどうやって楽しんでもらえるか、と考えて企画しています。 色々な限定商品を作ったりして抽選でプレゼントを用意したりすることで、ユーザーさんに還元したいという思いがあります」

「独身の日」に向けた作戦とは?

カルティエ――「独身の日」のセールに向けて、どのような作戦を取っていたのですか? 「2021年はその期間に注文して購入されたお客様向けに、シリアル番号で抽選を行い、カルティエの100万円以上のネックレスをプレゼントしたりしました。実際に購入してくれたお客様に、商品以外のところでも感動をプレゼントしたかったんです。カルティエのネックレス5個、ブレスレット5個などを景品にしました。 あと、昨年あたりから注目度が高まっていた中国版TikTokの「Douyin(抖音/ドウイン)」もうまく活用しました。TikTokでも10億円以上の売り上げを達成しました。昨年は新しいことにも同時にチャレンジしてみて、それもいい結果につながった理由のひとつだと思います」 ――24時間生配信も行ったそうですね。 「24時間どころかエンドレスにやってます(笑)。独身の日のプロモーションとして、2、3日休憩なくやっています。私自身も出ています」

2022年の売り上げは…

――今年の「独身の日」(2022年11月11日)の戦略はどのようなものでしたか? 「今年は蜷川実花さんとコラボした限定商品を企画しました。商品のボディに蜷川さんのデザインを反映したのです。家電製品でなかなか製品にデザインを生かすのは難しいと思うので、それは自社で製造を行っている弊社ならではの注目ポイントでした。その日に合わせて中国側でもタレントさんにライブ配信に出演してもらったりもしました。 他にも、今年はオフラインでのイベントも企画しました。百貨店とかで大型バスを使ったPOP UP体験店です。その他にも宝石屋さんとのコラボ商品も企画したり……。この日に向けて色々なプロモーションをかけたのです」
大型バスを使ったPOP UP体験店

大型バスを使ったPOP UP体験店

なお、気になる2022年の結果は、目標に設定した60億円を上回る「62億円」の売上を達成したとのこと。 以前から活用していたECサイトやライブコマースに加えTikTokなども積極的に活用したことが結果につながったと見ています。 ――「独身の日」に多く売り上げることを目標とするだけでなく、金さん自身もお祭りとして楽しんでいる感じですね。 「そうです。私たち『ARTISTIC&CO.GLOBAL』が、次はどんな商品を作るんだろうか、どんなプロモーションをするのか、どんなチャレンジをするのか、それを含めて私たち企業の価値だと思っています。購入してもらうまでや、購入していただいてからのコミュニケーションなども含めて、すべてみなさんに楽しんでもらえたらいいなと思っています」 仕事や子育て、全てに全力でまっすぐに突き進む金さん。今後も「ARTISTIC&CO.GLOBAL」のさらなる活躍に注目です。 <取材・文/まなたろう>
まなたろう
多岐にわたって興味があるアラフォーライター。コーヒーが好きで資格を取得中。海外に12年ほど住んでいたため、英語はそこそこ堪能。
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ