松本穂香「人の死から始まったとは思えないぐらい、前向きで笑顔の多い作品!」|映画『ひみつのなっちゃん。』
数々の映画やドラマに出演している、若手注目株の女優・松本穂香さん。大の映画好きでもあるという松本さんが、1月13日公開の話題作『ひみつのなっちゃん。』について語ります。
今回ご紹介させていただく作品は、『ひみつのなっちゃん。』です。ドラァグクイーン仲間であるなっちゃんの急死をキッカケに集まった、バージン、モリリン、ズブ子の3人。家族にカミングアウトをしていなかったなっちゃんの秘密を守るため、彼らはなっちゃんのアパートへ忍び込み、証拠隠滅を図る。そこでなっちゃんの母と鉢合わせした3人は、葬儀に参列するように誘われ、なっちゃんの地元である岐阜県・郡上八幡へと向かうことになる、というお話です。
印象的で美しいポスターに惹かれ観させていただいたのですが、中身もキラキラとした美しさを纏いつつ、終始優しく温かい眼差しで描かれた物語でした。人の死から始まったとは思えないぐらい前向きで明るく笑顔の多い作品で、きっとそれは彼女たちの持つ“この世界を生き抜く力強さ”からきているものなんじゃないかと思いました。
特にそれを強く感じたのは、モリリン役・渡部秀さんのお芝居です。友人の死をきっかけに自分自身と向き合い涙している姿に、彼女の今までの人生で堪えてきた苦しみがこちらにまで伝わってくるようでした。そしてもうひとつ印象的だったのは、彼女の瞳。そのものの“ガワ”だけを見るのではなく、言葉の内側やその人の内面まで深く見つめようとする瞳は、生きづらい中でも何かを見定めて、力強く生き抜いてきたモリリンだからこそ。地に足をつけて役を生き抜く姿に、同じ役者として刺激をもらいました。
バチバチのメイクでもスッピンでも、ズボンでもスカートでも、本当の美しさは変わらない。その人の眼差しや生きる姿勢はどうしたって内側から溢れ出てくる。だからこそ自分の声は抑えず自分らしく生きていく。本当の美しさは探さずとも、一人ひとりの中でキラキラと輝いているのだと思います。それを見つめることで、きっと私たちは、本当の意味で自由になれる気がします。そんなことを考えさせてくれる、とっても前向きな映画でした!
●『ひみつのなっちゃん。』
配給/ラビットハウス 丸壱動画 滝藤賢一の劇場長編初主演作。そのほか渡部秀、前野朋哉らが出演。©2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会
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<文/松本穂香>
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人の死から始まったとは思えないぐらい前向きで明るくい作品
バチバチのメイクでもスッピンでも、本当の美しさは変わらない
松本穂香
1997年2月5日生まれ。大阪府出身。2015年『風に立つライオン』で長編映画デビュー。2017年連続テレビ小説『ひよっこ』に出演して注目を集め、2018年にはTBS日曜劇場『この世界の片隅に』で主演に抜擢。2023年、映画『“それ”がいる森』で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。2024年10月期月9ドラマ『嘘解きレトリック』では鈴鹿央士とともにW主演を務めた
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