なぜサイババ信仰が問題視されるかは様々な論点があるでしょう。イギリスのBBCが報じた少年への性的虐待疑惑や、日本ではのちのオウム真理教事件へとつながる超常現象ブームへの下地を作った張本人と考える向きもある。
藤井風が心酔した美しい教えの裏に、こうした事実があることも押さえておく必要があります。
多くのファンが落胆したのも、“よりによってサイババかよ”との思いがあっただろうことは想像に難くありません。

藤井風のアルバム『HELP EVER HURT NEVER』『LOVE ALL SERVE ALL』タイトルと同じサイババの言葉。(画像:サティヤ・サイ東京センタートップページより)
ボブ・ディランやプリンスは宗教による影響を隠さなかった
その上でもう一点指摘するとしたら、そもそもサイババをモチーフにしているのであれば出典を明らかにすべきでした。これはステルス布教以前にソングライターとしてわきまえるべき創作上のルールだと言えるでしょう。
ここでボブ・ディランを引き合いに出すのは気が引けますが、ディランはユダヤ教からキリスト教に改宗したことを隠すことなくゴスペル色の強い『Saved』、『Shot of Love』、『Slow Train Coming』の三部作を発表しました。
のちに「エホバの証人」の信者となったプリンスも、その教えのおかげで性的描写に頼らずに曲を作るようになったと公言しています。
どちらも音楽制作の源泉に宗教の存在があるのだから、その根拠を明示してメッセージを発しているわけですね。