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息子を叩いてしまう夫とカウンセリングに行ってわかった“キレる理由”。作者に聞いた<漫画>

夫が自分の気持ちを話すのが苦手な理由

――カウンセリングではご夫婦がそれぞれの生い立ちを振り返りますが、男性はあまり覚えていなかったり、具体的に話すのが苦手な人が多いとカウンセラーの方が話すシーンがありました。 水谷さるころさん(以下、水谷):男性は特に、成長過程で自分の気持ちを聞いてもらったり、気持ちを言葉にして伝える経験をしている人が非常に少ないと思います。特に日本では「男の子なんだから泣くな」のような「感情を認知するな」と教育する社会的な傾向が強い。日本の教育には昭和以前からの「軍隊方式」が色濃く残っているんです。昔は男の人が感情を認知すると戦争に行ってくれなくなって困るからだったと思うのですが、長らくその状態が続いていた。だから、年齢が上の人ほどその傾向が強くなるのかなと。 ――パートナーのノダDさんは50代でしたよね。 水谷:夫は年の割には柔軟なタイプだと思うのですが、やっぱりつらかったり嬉しかったりすることを「男の子だから」と感情を出すことを良しとされない教育をされてた世代です。そんな環境で育った人が「子どもの頃何を感じていましたか?」と大人になってから生い立ちを聞かれても全然言語化できないし、認知していないから覚えてない。 カウンセリングをしてくれた山脇先生曰く、それは男だから言えないというより、男女かかわらず「親に話を聞いてもらえなかった子は話せない」ということなので、男性のほうがより話を聞いてもらえる機会が少なかったという、社会構造としてある程度仕方がないと思います。 夫が自分の気持ちを話せないことに対して「なんで言えないの?」と思うのではなく、「話せないならしょうがないよね」とは思っています。でも「だから言えなくてもいい」というわけではなく「やってないなら練習してね」と今は「言語化して伝える」ということを意識してやってもらっています。 ーー本の中では、ノダDさんが息子さんに手をあげてしまったとき、水谷さんが「明らかに自分より弱い相手に力を使うのはフェアじゃない」と指摘すると、ノダDさんが「自分にとってのフェアは相手が子どもだろうが誰だろうが同じように扱うこと」と反論するシーンがありました。 水谷:夫は自分と子どもを同等のものとして扱ってしまう傾向がありました。自分より弱い相手を「ケアする視点」がなかったのだと思います。それに、今までの日本社会の傾向として「ケアは女性の役割」とされていて、男性は誰かをケアすることも自分の感情をケアすることも教えられてこなかった。夫を見ていて、子どもが生まれたから急にそれをやれと言われてもできないよね、と感じました。

話を聞くことができる人は、何歳でも変われる

――50代のノダDさんが、自分に向き合って変わろうとするところがすごいと思いました。 水谷:私が夫を評価しているのは、私の話を聞いてくれるところなんです。 私の漫画は夫婦の問題をテーマにしていたりするので、夫の欠点を描くのですが、読者の方に「どうしてこんな人と結婚しているんですか?」と言われることがよくあります(笑)。あと、「ノダDさんには漫画には描かれていないすごい魅力があるのでは?」という感想をいただくことがあるんですけど、夫は自分の悪いところを指摘されたときに話を聞いて、理解して改善する能力があるところが素晴らしいと思います。 もともと、仕事で出会ったのですが「離婚して辛い」というので、「人生がつらいときは空手するといいよ!」と私が通っていた空手道場の支部に誘いました。当時、私は黒帯で弐段を取っていて、仕事では発注側だった夫が後輩になったんです。私のほうが年下なのですが、夫は指導をすごく素直に聞いてくれていました。中年以上ではじめた男性の中には、プライドがあるのか、人の話を聞けないタイプの人もいるんです。表面上は「はい」と返事をするんですが、全然言われたところを直さない。 そういう人もいるので、自分のできてないところを素直に修正できる夫は「伸び代のあるおじさんだな」と思います(笑)。 ――カウンセリングでは自分の悪いところをカウンセラーに説明したり、第三者の意見を受け入れなければならないので、ノダDさんにとってもハードルが高かったのではないでしょうか? 水谷:夫のメンタルが強いのと、「ダメだと分かったんだからやるしかない。そこから逃げたらかっこ悪い」という気持ちがあったようです。
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体罰は法律で禁じられている
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