木村拓哉というその人が「スターゆえの孤独」を抱えているような印象も、劇中の織田信長にはプラスに働いているのではないか。
唯一無二の魅力を持ち周りからはカリスマ視されるものの、他人とは分かり合えずに孤独でいる。そのような(勝手ではある)木村拓哉へのイメージが、劇中の織田信長とは一致しているように見える。その孤独である印象が、転じて劇中で虚勢を張っていたり、情けなくも思える言動にもマッチしていると思うのだ。

言うまでもなく、政略結婚をしながらも、勝気な性格で織田信長と渡り合い、そしてとある「夢」を幸せそうに語る濃姫に、綾瀬はるかはピッタリだ。
彼女は、言いたいことが言えず、男性社会の中で身動きが取れなかったであろう当時の女性とは真逆の「自由意志」を持った存在。織田信長と違ってあまり固定されたイメージがないからこそ、良い意味での「創作」ができたキャラクターと言っていいだろう。
その濃姫のキャラクターをもってして、本作には間違いなく現代に通ずるフェミニズム的なメッセージも託されている。彼女が「男らしさ」に囚われて虚勢を張っている織田信長をピシャリと言いつける様は痛快でもあるし、同時にそれこそがお互いの心を開くきっかけにもなる関係性も面白い。