NHK『大奥』、冨永愛が本当にすごい!振られっぷりにしびれた
NHKドラマ10、男女逆転『大奥』も佳境に入り、八代将軍徳川吉宗・水野祐之進編となる第8話が放送された。時代は改めて、第1話にプロローグとして登場した吉宗の世に。本ドラマの人気への着火点となり、その後も語り部として支えてきた吉宗役の冨永愛が、いよいよ先頭を歩き出した。さらには大岡越前、赤ひげ先生と、キラ星のごとき時代劇のスターキャラが登場し、日本を救うミッションをクリアしようと前へ進み始めた。
男女逆転『大奥』の魅力は、完全なるファンタジー下での設定でありながら、見事なまでに史実に沿ってみせ、「ひょっとして本当の歴史はこちらなのでは?」とよぎるほどの世界を作り上げ、現実社会の問題点を浮き彫りにしてみせることだ。
秋には第2シーズンが放送されることが発表済みの『大奥』。そこでは大政奉還までが描かれる予定だが、第1シーズンはこの吉宗の世まで。これまでも、よしながふみの傑作漫画を実写化するにあたり、より良い脚色を加えてきた森下佳子脚本だったが、第8話では、さらにはっきりとオリジナルの方向へと舵を切った。原作ではさらりと触れられただけの小石川養生所設立にフィーチャーし、さらに第1話で吉宗に町人としての命をもらった水野祐之進(中島裕翔)を呼び戻しての、日本全国をまわる赤面疱瘡への特効薬探しがスタートした。
これまでの「修羅の道」のごとき大奥の空気が一変した吉宗編は、コメディ的要素を随所に差し込み、中心に立つ吉宗その人もカラっとして、原作よりもかなりのチャーミングさを感じさせ、冨永愛の魅力を生かしている。それにしても立ち姿が様になるだろうことは、端から分かっていたが、これほどまでに吉宗役がハマるとは恐れ入った。
五代将軍徳川綱吉を演じた仲里依紗も、時代劇はこの『大奥』が初だが、10代から主演も多かった仲は、俳優活動の初期といえる『純喫茶磯辺』(2008)のころには、すでにその巧さが光っていた。綱吉のすばらしさには驚かされたが、その実力からは予想されたことでもあった。
冨永は、これまでに俳優の仕事もしてはいるものの、やはりイコール、トップモデルの人。それが初めての時代劇、将軍役である。本作における吉宗との親和性とともに、セリフ回しを含めた、それらを表現する力、魅せる力の高さに改めて驚いた。