Lifestyle

「まさか自分が」20歳でがんになった女性。発見のきっかけは“母のひと言”だった

様々な支援があることに気づいてほしい

――ご自身の体験を通して、同世代の方に伝えたいことはありますか? Aさん:情報を得ることはとても大切ですが、地方は情報格差があると感じています。私の大学のあった地方の県は情報が少なく、就職して大阪や東京で働くようになってからLINEやSNSでがん患者のための情報が発信されていることや、患者会というものがあることを知りました。 最近では地方でもAYA世代の患者のために情報発信をする動きが出ています。例えば富山県で患者会を作ろうとされている方や、長野県で活動をされている方もいます。そういった活動を後押しできるよう「AYAがんの医療と支援のあり方研究会」は活動しています。私もスタッフとして、AYA世代の患者さんに様々な支援があることに気づいてもらえるよう活動をしていきたいです。

まずはがんを恐れず、正しい知識を持って

――Aさんのように、若い年代は健康診断を受けない人が多いのでしょうか? 清水:AYA世代は学生や社会人、子育て中の方など、皆さん忙しい日常を送っているので健康のことが二の次になってしまうことが少なくないと思います。学生さんなど、体調が悪くても1人で病院に行かずになんとかしのごうという人もいるかもしれません。 そういったことは医療者からは見えにくいので、Aさんのようながんを経験した方のお話の中から教えてもらうことはすごく多いのです。そこをしっかりと聞き取りしないと、AYA世代の患者さんのケアを充実させられないと考えています。 講義を受ける大学生――今がんになっていないAYA世代の人は、どんなことをしておいた方がいいのでしょうか。 清水:若くしてがんを発症することは、とても特殊なことのように感じるかもしれません。しかし、がんは日本人の2人に1人が発症するとても一般的な病気です。若いがん患者さんは、たまたま人より早くなってしまったという状況なのです。 がんに対して怖いイメージを持っているかもしれないですが、今はがんの診断や治療が進歩しており、予後はよくなっています。しっかりと調べてみると元々持っていた印象が変わるかもしれません。まずはがんを恐れず、正しい知識を持つことが大切です。 ――すでにがんを発症している方々に向けて、メッセージをお願いします。 清水:AYA世代の患者さんは少ないので、患者さんにとって必要な支援を作っていくためにも、皆さんと一緒に声を上げていけたらいいなと考えています。今の若い人は、SNSで情報収集をすることが当たり前になっていたり、生活様式がどんどん変わっていっています。頭の固い医療者が考えたものではなく、AYA世代の実態に合った支援をするためにも若い人たちの意見は大切です。もちろん体調が落ち着いた時に、少しだけ私達に知恵を貸していただけたらありがたいです。 【前々回記事】⇒若いがん患者から、医師が一番よく聞く“困りごと”とは?他人事なんかじゃない 【前回記事】⇒がんの初期症状ってどんなもの?“お年寄りの病気”じゃない、若い世代のがんの特徴 【清水千佳子先生】 国立国際医療研究センター病院 乳腺・腫瘍内科診療科長。東京医科歯科大学医学部医学科卒業。国立がん研究センター中央病院での研修、米国のM.D.Anderson Cancer Center Medical Exchange Program短期留学を経て、同病院の医員、医長として勤務。平成29年10月より現職。専門は乳癌の薬物療法。AYAがんの医療と支援のあり方研究会 理事長のほか、日本乳癌学会評議員、日本臨床腫瘍学会協議員、日本がん・生殖医療学会理事などを務める。 <取材・文/都田ミツコ>
都田ミツコ
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。
1
2
3
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ